ムスカウ公園

ムスカウ公園は、ドイツのバート・ムスカウとポーランドのウェンクニツァに跨る、広さ560ヘクタールもの広大なイギリス式庭園です。ナイセ川を挟んで東西に広がり、その美しい景観は多くの人々を魅了しています。

歴史

19世紀初頭、この地を所有していたヘルマン・フォン・ピュックラー＝ムスカウ侯爵は、当時イギリスで流行していた風景式庭園に着目し、1815年に造園に着手しました。彼は、自然の地形や植生を活かし、木や水流を風景画のように配置することで、自然と調和した美しい景観を創り上げました。また、庭園内の建物も、景観に溶け込むように建築・改築されました。ピュックラー侯爵は、30年もの間、この庭園の整備に情熱を注ぎ込みました。

1845年、ピュックラー侯爵は経済的な理由からこの地を手放すことになりますが、その後、この地を買い取ったオランダの侯爵が、ピュックラー侯爵から造園を学んだエドゥアルト・ペツォルトを雇い入れ、ピュックラー侯爵の構想は引き継がれることとなりました。

しかし、第二次世界大戦末期のベルリンの戦いにおいて、ムスカウ公園も戦場となり、庭園内の城や橋は甚大な被害を受けました。終戦後、ナイセ川が新たな国境線（オーダー・ナイセ線）となったことで、庭園はドイツとポーランドの二つの国に分割されてしまいました。

現在の状況

戦火で破壊された建造物のうち、旧城 (Altes Schloss) は東ドイツ時代の1972年に修復されました。新城 (Neues Schloss) も修復作業が進められており、往時の美しい姿を取り戻しつつあります。また、国境を跨ぐ橋の修復も行われ、東西を結ぶ役割を果たしています。

ムスカウ公園は、長年にわたる荒廃の時期を経て、両国の努力によって復興が進められ、その文化的価値が再評価されるようになりました。そして2004年、その卓越した景観デザインが評価され、ユネスコの世界遺産に登録されました。

登録基準

ムスカウ公園は、以下の世界遺産登録基準を満たしていると評価されました。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作: 風景式庭園の傑作として、人間の創造性と自然との調和が見事に表現されている点が評価されました。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例: 19世紀の風景式庭園の様式を代表する貴重な例であり、当時のランドスケープデザインの思想や技術を伝えるものとして評価されました。

ムスカウ公園は、その歴史的背景、美しい景観、そして文化的な価値において、世界的に重要な遺産であり、今後もその保護と継承が求められています。

Stiftung Fürst Pückler Park Bad Muskau

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