ムラデノヴァツ

ムラデノヴァツ：歴史と自然が息づくベオグラードの一区

ムラデノヴァツは、セルビアの首都ベオグラードに位置する区であり、その名称はセルビア語で「若者」を意味する言葉に由来します。コソヴォ・ポリェの戦いの後、この地を復興させた三兄弟の一人、ムラデンの名が区名になったという伝承が残っています。

歴史

ムラデノヴァツの歴史は古く、中心部から4.5km離れたデヴィチメジュには、中世の集落跡が残っています。ヴェリキ・ルグ川の谷沿いに広がるこの集落跡からは、9世紀から中世にかけての人々の生活の痕跡が見つかっています。発掘調査の結果、集落は9世紀と13世紀後半に一度消滅したことが明らかになっています。

公的な記録に初めてムラデノヴァツの名が現れるのは1528年で、オスマン帝国の国勢調査にその名が記載されています。自治体としての地位を確立したのは1893年8月2日のことです。1971年には、ムラデノヴァツとラザレヴァツはベオグラードに合併されました。

2023年5月4日には、区内で発生した乱射事件により多数の死傷者が出て、ベオグラード中心部での大規模な反暴力デモにつながるという悲劇も経験しました。

地勢と観光

ムラデノヴァツはベオグラード中心部から南へ47kmの距離に位置し、面積は339km²、2022年の人口は約5万3千人です。

この区の有名な観光スポットの一つがセルテルス温泉です。1893年に発見されたこの温泉は、ドイツのゼルターズに似ていることからその名が付けられました。ナウム・アタナシイェヴィッチ医師が投資したことで温泉地として発展し、戦間期にはさらに発展を遂げました。1975年に行政機関が買い取り、1989年にはリハビリテーションセンターが完成しました。リウマチや脳の異常に効果があるとされ、温水に泥とゼオライトが混ざった湯は40℃程度の温度です。温泉施設は広大な敷地を有し、多くの病床を備え、毎年多くの患者が療養に訪れます。

また、セルテルス温泉の近くには、区内最高峰のコスマイ山（標高628m）があります。山頂には第二次世界大戦で亡くなったパルチザンの廟があり、そこに至る道中には中世の廟も存在します。

その他、マルコヴァツ湖やラブロヴァツ湖、古代の住居跡なども観光地として挙げられます。

民族構成

2011年時点での民族構成は以下の通りです。

セルビア人：49,286人 (93.07%)
ロマ：1,323人 (2.50%)
* その他

経済

ムラデノヴァツの主要な産業は工業です。観光業も盛んで、コスマイ山の廟、セルテルス温泉、マルコヴァツ湖、ラブロヴァツ湖、古代の住居跡などが観光客に人気です。

教育

区内には小学校が8校、中学校が2校あります。最大の小学校は2000人以上の生徒を抱えています。

ムラデノヴァツは、豊かな歴史と自然に恵まれた魅力的な区です。温泉での療養や、歴史的な名所の訪問、自然の中でのアクティビティなど、様々な楽しみ方ができます。

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