ムルガ

ムルガ：カーニバルを彩る音楽劇

ムルガは、アルゼンチン、ウルグアイ、チリ、コロンビアなどの国々で、主にカーニバルの時期に上演される独特なミュージカル形式です。特にモンテビデオとブエノスアイレスのカーニバルで盛んですが、ブエノスアイレスのムルガはモンテビデオに比べて規模が小さい傾向にあります。アルゼンチンのムルガはダンスに重点が置かれ、ウルグアイのムルガは歌の要素が強いという違いがあります。

起源と発展

ウルグアイのムルガは、スペインのカディス地方で演奏される民族音楽であるチリゴタに由来するとされています。しかし、長い年月を経て独自の進化を遂げ、今日では全く異なる音楽形式へと発展しました。

公演の特徴

ムルガの公演は、通常17人までのグループ（多くは男性）によって行われます。ウルグアイでは、カーニバルに先立つ1月下旬から3月上旬にかけて、各グループが約45分間の音楽公演を準備します。この公演は、複数の楽曲とレチタティーヴォ（朗唱）で構成され、タブラドスと呼ばれる地域の大きな舞台で披露されます。また、ムルガの公式大会では、他のムルガグループと競い合います。

楽曲の歌詞は、楽団が定めた特定のテーマに基づいており、そのテーマは前年度のウルグアイ国内外の出来事から選ばれることが多いです。そのため、ムルガは社会的な抵抗運動を題材にすることが多く、1970年代のウルグアイ独裁時代には、アラカ・ラ・カナなどのグループが政権に批判的な左翼的パフォーマンスで知られていました。

音楽的要素

伝統的なムルガの楽団は、コーラスと3人のパーカッション奏者で構成されます。歌手たちは5つのボーカルパートを使い、ポリフォニー形式で歌い上げます。その歌声は、声量にあまり変化をつけず、鼻にかかったような大きな声で歌われるのが特徴です。パーカッションには、ボンボ（腰に取り付けるバスドラム）、レドブランテ（スネアドラム）、プラティーリョス（シンバル）といった楽器が使用されます。これらの楽器は、ヨーロッパの軍隊楽団に由来しています。

公演で最も重要な楽曲は、最初に歌われるサルード（saludo：挨拶の歌）と最後に歌われるレティラダ（retirada）またはデスペディーダ（despedida：別れの歌）です。これらの楽曲はカーニバルの期間中、ラジオで頻繁に放送され、1937年のサルード・アラカ・ラ・カナのように、ウルグアイの文化において象徴的な存在となっているものもあります。

衣装と舞台

ムルギスタス（ムルガの楽団員）は、色鮮やかな道化師のようなコスチュームを身につけます。舞台での演奏において、小道具が使われることは稀です。歌手たちは、舞台の袖や後方からパーカッション奏者とともに前列へと進み出て演奏することが一般的です。

現代音楽への影響

ムルガの音楽は、ウルグアイのポピュラー音楽と深く結びついています。ハイメ・ルース、ルベン・ラダ、ノ・テ・バ・グスタール、マキシモ・ディエゴ・プホール、ワシントン・ルナ、アレハンドロ・バルビースなどのアーティストが、自身の音楽にムルガの要素を取り入れています。アルゼンチンでも同様の傾向があり、ベルスイート・ベルガラバート、ロス・アウテンティコス・デカデンテス、アリエル・プラート、ロス・ファブロソス・カディリャクスなどがムルガを取り入れた楽曲を制作しています。

ムルガは、カーニバルの活気と社会へのメッセージを融合させた、南米独自の音楽文化として、今もなお多くの人々に愛されています。

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