ムンドグモール族

ムンドグモール族

パプアニューギニアに居住する少数民族の一つ、ムンドグモール族（Mundugumor）は、その歴史的な習俗や独特な社会構造において特異な存在として知られています。かつては首狩りという習俗を有し、特に近隣の沼沢地に暮らす住民たちへの襲撃を繰り返していたことから、外部からは勇猛あるいは凶暴な部族として認識されていました。

居住地

彼らの伝統的な居住地は、ニューギニア島の西部高地に位置し、セピック川の主要な支流の一つであるユアット川の上流部に広がっています。この地域は比較的肥沃な高地であり、彼らの生活の基盤を形成しています。

生活と社会

ムンドグモール族の生活は、その社会構造と深く結びついています。

経済活動

彼らは、敵対関係にあったともされる近隣の沼沢地住民とも、交易関係を築いていました。自分たちが持つタバコやビンロウジュの実、ココヤシなどの産物と引き換えに、沼沢地住民が作る鍋や籠といった生活必需品を手に入れていたのです。これは、敵対関係だけでなく、相互依存の関係も存在していたことを示唆しています。

社会構造と居住形態

ムンドグモール族の社会構造は、非常に特徴的です。一般的に、社会組織は母系を中心に形成されていましたが、部族全体としての強い団結は見られません。むしろ、同族間においても互いに対する強い警戒心や不信感が根底にあります。

この同族間の不信感は、彼らの基本的な生活様式に深く影響を与えています。各家族は、他の家族の居住地から離れて、独立した生活圏を持つことを好みました。つまり、妻子とともに互いに距離を置いた場所に畑を作り、その傍らに家を建てて暮らしていたのです。

彼らが建設する家屋もまた、この警戒心の強さを反映していました。かつては、自宅の周囲に頑丈な塀を巡らせていたとされています。これは、外部からの襲撃だけでなく、同じ部族の人間による襲撃にも備えるためだったと言われています。この事実は、ムンドグモール族の社会が、血縁や同族という枠組みの中にあっても、常に緊張関係や潜在的な対立を抱えていたことを示唆しています。

過去の習俗

彼らの歴史において特筆すべきは、かつて行われていた首狩りの風習です。この習俗は、主に近隣の沼沢地住民を対象に行われたとされ、彼らが「凶暴」と見なされる一因となりました。このような習俗の存在は、彼らの社会が持つ勇猛さや、あるいは特定の集団に対する強い敵対心を表していたと考えられます。

ムンドグモール族は、パプアニューギニアの多様な民族の中でも、そのユニークな歴史、居住地、そして特に同族間の関係性における不信感に基づく独特な社会構造を持つ点で、人類学的に興味深い研究対象とされています。彼らの生活様式は、外部との交易を通じて物資を確保しつつも、内部的には強い警戒心を持って暮らすという、複雑な社会心理を反映しています。

参考文献

* 『世界の民族 1』《オーストラリア・ニューギニア・メラネシア》平凡社、1978年

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