ムーズ・アルゴンヌ攻勢

ムーズ・アルゴンヌ攻勢：第一次世界大戦におけるアメリカ軍最大の作戦

ムーズ・アルゴンヌ攻勢は、第一次世界大戦の終盤、西部戦線においてアメリカ外征軍（AEF）とドイツ帝国軍の間で繰り広げられた激戦です。この戦いは、アメリカ軍が初めて本格的に戦場の中核を担った戦いであり、アメリカ軍の歴史においても最大規模の作戦となりました。連合軍による一連の攻勢「百日攻勢」の終盤を飾る戦いとして、その後の戦争終結に大きく影響を与えました。

作戦の背景

サン・ミッシェルの戦いで勝利を収めた連合軍は、メジェールからメスを結ぶ重要な鉄道線の制圧を計画しました。そのために、この鉄道線の中継点であるスダンの占領を目指し、ドイツ軍を東と西から挟撃する作戦を立案しました。この地域は、アルデンヌ山系に近く、ドイツ軍の退路を遮断する上で重要な地点でした。しかし、ムーズ・アルゴンヌ地域から鉄道線に到達するためには、30マイル以上の長距離移動が必要であり、かつドイツ軍の主力が駐屯していたため、迅速な移動が求められました。

戦闘の推移

9月26日～10月3日：攻勢開始と初期の苦戦

9月26日午前5時30分、AEFはヒンデンブルク線に向けて前進を開始しました。当初の計画では、この日に8マイル以上の前進とクリームヒルデ線の突破を目標としていましたが、第79師団がモンフォーコンでドイツ軍の激しい抵抗に遭い、進撃が停滞しました。翌日、第79師団がモンフォーコンを占領したものの、この遅れがドイツ軍に再編成の機会を与え、連合軍の進撃は鈍化しました。29日には、ドイツ陸軍の増援部隊が到着し、連合軍は各所で押し戻され、戦線は膠着状態となりました。

10月4日～10月31日：アルゴンヌの森の戦い

10月4日、ソムランス近郊まで進出したAEFは、再び北進を開始しました。しかし、十分な支援砲撃がないままドイツ軍の防衛線に歩兵突撃が繰り返され、多くの損害を出しました。そのような状況下で、ハンター・リゲット率いる第一軍団の第一師団がイエール川東岸に橋頭堡を確立しました。その後、第82師団がイエール川西岸に展開し、アルゴンヌの森のドイツ軍を側面から攻撃する作戦が開始されました。10月末までに、AEFはアルゴンヌの森を突破し、エーヌ川とイエール川の分岐点付近まで進撃しましたが、右翼ではドイツ軍の激しい抵抗に直面し、モンフォーコン近郊で激戦が続きました。

11月1日～11月11日：スダンへの進撃と終戦

AEFがアルゴンヌの森を越えるころには、フランス第四軍は森の西方30マイルまで進軍していました。11月1日、米第1軍団はブルゴーニュの森に潜むドイツ軍をフランス軍と包囲するために西進しました。ブルゴーニュの森の掃討後、他の前線のドイツ軍は抵抗をほとんどせずに後退し、ムーズ川からシエール川にかけて防御陣地を築きました。AEFはブザンシーを制圧し、最終目標であるスダンに迫りました。しかし、パーシング将軍の「アメリカ軍がスダン入城の栄誉を担うことを望む」という訓示が混乱を招き、第一軍団の進撃が遅れる事態となりました。その結果、11月11日にフランス第四軍が先にスダンを攻略しました。同日、ドイツ革命の影響により、ドイツ代表が連合国との休戦条約に調印し、戦闘は終結しました。

戦いの影響と教訓

ムーズ・アルゴンヌ攻勢は、アメリカ軍にとって初めての大規模な作戦であり、多くの教訓をもたらしました。当初、アメリカ軍は戦闘経験の不足や指揮系統の混乱から大きな損害を被りましたが、その後の戦いで経験を積み、最終的には連合軍の勝利に大きく貢献しました。この戦いは、第一次世界大戦の終結を早め、その後の世界の歴史に大きな影響を与えました。

参考文献

* リデル・ハート著、上村達雄訳『第一次世界大戦 下』中央公論社　2001年 　ISBN 4120031004

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