ムーンナイト (マーベル・コミック)

ムーンナイト

ムーンナイト（Moon Knight）は、1975年にマーベル・コミックから誕生したスーパーヒーローです。作家ダグ・メンヒとアーティストのドン・パーリンによって創造され、『ウェアウルフ・バイ・ナイト』誌で初登場した後、自身のシリーズがスタートしました。

概要

初登場となった『ウェアウルフ・バイ・ナイト』第32号では、ムーンナイトは富豪の集まり「コミッティー」に雇われ、人狼のジャック・ラッセルを捕らえる任務に就きました。この時、彼は特別なコスチュームと銀製の武器を授けられます。任務を遂行したムーンナイトでしたが、コミッティーがジャックの妹や恋人を捕らえ、ペットや武器として扱おうとする非道な計画を知り、翻意します。彼は報酬を受け取った上でジャックを助け出し、コミッティーを退散させました。

背景と起源

ムーンナイトの本名はマーク・スペクター。シカゴ出身の白人男性で、元々は海兵隊の奇襲部隊に所属し、除隊後はその経験を活かして傭兵となりました。幼少期にナチスの連続殺人犯と接触した経験が、解離性同一性障害（多重人格）の発症に影響を与えたという説があります。ボクシングの経験も持ち合わせる彼は、肉体的に鍛え上げられています。やがてマークは凶悪なテロリスト、ラウル・ブッシュマンの副官としてスーダンで活動しますが、ブッシュマンが考古学者とその娘を殺害し遺跡を略奪する行為に反発。ブッシュマンに敗れ重傷を負い、砂漠に置き去りにされて瀕死の状態に陥ります。しかし、遺跡の作業員に救われ、古代エジプトの月の神コンスの像の前まで運ばれた際、神秘的な力によって心臓が再び動き出し蘇生します。

この奇跡的な復活をコンスによるものと信じたマークは、神に仕えることを誓い、復讐の騎士「ムーンナイト」となることを決意。ブッシュマンに復讐を果たした後、コンスの像と共にアメリカへ帰還し、ニューヨークを拠点にクライムファイターとしての活動を開始します。彼は「月の騎士」「コンスの拳」とも呼ばれるようになります。

能力と装備

月の神コンスとの契約によって、ムーンナイトは様々な能力を得ています。現在はコンスへの崇拝を停止しているため能力が失われている可能性も示唆されていますが、通常は以下のような力が描写されます。

特殊能力

超人的な身体能力: 通常の人間を凌駕する耐久力、攻撃力、走力を持ちます。
優れた視力: 暗闇でも正確に物を見通すことができます。
月の影響: 月の満ち欠けに力が連動し、満月の夜には最大のパワーを発揮します。夜間は不老不死になるとも言われます。
自己再生能力: 負傷しても素早く回復する力があります。
影: 影の中を移動することが可能です。

特殊技能

多重人格: マーク・スペクター自身に加え、富豪のスティーヴン・グラント、タクシー運転手のジェイク・ロックリーなど複数の人格を有します。これらの人格は、異なる視点から情報を収集したり、特殊なスキルを発揮したりするのに役立ちます。時には他のヒーローの人格が生まれることもあります。
戦闘技術: 元ボクサーで軍経験を持つため、素手での格闘術に長け、ヌンチャク、ブーメラン、斧、弓など多様な武器を使いこなします。
操縦技術: バイク、ヘリコプター、飛行機など、様々な乗り物を巧みに操縦できます。

装備

コスチューム: 白を基調とした特徴的な衣装で、マントはグライダーとして機能します。
クレセント・ダーツ: 三日月型の金属製手裏剣で、投擲武器として使用されます。
ムーンコプター: 三日月を模した特殊なヘリコプターです。

弱点

ムーンナイトの最大の弱点は、彼の精神的な状態です。解離性同一性障害や過去の経験から精神的に不安定であり、これが他のヒーローとの連携を困難にしたり、悪人に対して躊躇なく過度な暴力を行使する原因となったりします。

関連人物

マレーネ・アルラウネ: 考古学者の娘で、マークの恋人。スーダンでの出来事を通じてマークに惹かれます。
フレンチー: 本名ジャン=ポール・デュシャン。マークの元傭兵仲間で親友。ムーンナイトの活動をサポートする執事や運転手、メカニックとして活躍します。
バートランド・クロウリー: ホームレス。ジェイク・ロックリーの人格を通じてマークに情報を提供することがあります。
コンス: 古代エジプトの月の神であり復讐の神。瀕死のマークを蘇生させ、アバターとして力を与えました。
ラウル・ブッシュマン: マークの元上司であり、彼を瀕死に追いやった宿敵。
* シャドウ・ナイト: マークの弟、ランドール・スペクター。快楽殺人者であり、兄を恨んでムーンナイトに敵対します。

MCU版

マーベル・シネマティック・ユニバース（MCU）では、俳優オスカー・アイザックがムーンナイト／マーク・スペクター役を演じました。日本語吹替は関智一氏が担当しています。MCU版では、特に彼の解離性同一性障害が物語の中心に据えられ、マーク・スペクター、スティーヴン・グラント、そして謎の第三の人格ジェイク・ロックリーが同一の身体に存在するという設定が強調されています。

物語は、ナショナル・ギャラリーのギフトショップ店員としてロンドンで平凡に暮らすスティーヴン・グラントの視点から始まります。彼は自身を睡眠障害だと思っていましたが、やがて自身の体に別の記憶や出来事があることに気づき始め、それが元傭兵であるマーク・スペクターの人格の活動によるものであることを知ります。同時に、彼らは月の神コンスのアバターとしての宿命と、古代エジプトの女神アメミットの復活を企むアーサー・ハロウとの戦いに巻き込まれていきます。

マークとスティーヴンは、それぞれの視点やスキル（マークの戦闘能力、スティーヴンのエジプト学の知識）を活かして困難に立ち向かいますが、人格交代による混乱や、コンスからの過酷な要求に苦悩します。彼らの内面世界も描かれ、幼少期のトラウマや家族との関係、そして人格が生まれた経緯が徐々に明らかになります。特に、彼らが冥界を彷徨う中で互いの存在を受け入れ、精神的な調和を得る過程が重要な要素となります。最終的にハロウとアメミットを打倒しますが、マークとスティーヴンですら知らない、より冷酷で暴力的な第三の人格、ジェイク・ロックリーの存在が示唆され、物語に含みを残します。

MCU版のムーンナイトは、多重人格によって異なるコスチュームを纏います。マークは包帯のような意匠の「ムーンナイト仕様」のスーツを、スティーヴンはタキシード風の「Mr.ナイト仕様」のスーツを召喚します。これらのスーツはコンスの力によって現れ、超人的な身体能力や治癒能力、さらには古代の魔法のような力をもたらします。クレセント・ダーツや伸縮する警棒「トランチョン」なども武器として使用されます。

その他のメディア

ムーンナイトは、アニメシリーズ『アルティメット・スパイダーマン』や『アベンジャーズ・アッセンブル』、様々なビデオゲーム作品（『MARVEL ULTIMATE ALLIANCE』シリーズ、レゴ作品、モバイルゲームなど）にも登場しており、それぞれの作品で独自の描写がなされています。テーマパーク「アベンジャーズ・キャンパス」では、MCU版のキャラクターとしてグリートに登場することもあります。

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