メアリー・ブレア

メアリー・ブレア：色彩と夢を描いたディズニーの魔術師

メアリー・ブレア（1911年10月21日 - 1978年7月26日）は、20世紀のアメリカを代表する芸術家の一人です。彼女は、ウォルト・ディズニー・スタジオでの仕事を通じて、アニメーション映画やテーマパークのアトラクションに革新的な視覚的スタイルをもたらしました。特に、『シンデレラ』、『ふしぎの国のアリス』、『ピーター・パン』といった名作映画における彼女のコンセプトアートは、その後の作品の方向性を決定づけるほどの影響力を持っています。

生い立ちと初期のキャリア

オクラホマ州で生まれたメアリーは、幼い頃から芸術に対する強い関心を示しました。サンノゼ州立大学で美術を学び、シュイナード芸術学校では水彩画の技術を磨きました。そこで出会った夫となるリー・ブレアと共に、彼女は自身の芸術的才能を開花させていきます。

1939年、メアリーはウォルト・ディズニー・スタジオに入社し、アニメーション業界でのキャリアをスタートさせました。しかし、初期の頃は必ずしも順風満帆とは言えませんでした。一時的にスタジオを離れるも、すぐに復帰し、彼女の才能が真に開花するきっかけとなる南米視察旅行に参加します。

ウォルト・ディズニーとの出会いと才能の開花

南米旅行は、メアリーにとって大きな転機となりました。現地の文化や色彩に触発された彼女は、それまでのディズニー作品には見られなかった、鮮やかで大胆な色彩感覚を身につけます。ウォルト・ディズニー自身も、メアリーの独特な才能に感銘を受け、彼女に重要な役割を任せるようになります。

メアリーは、『ラテン・アメリカの旅』や『三人の騎士』といった作品で、その才能をいかんなく発揮しました。彼女の描くキャラクターや背景は、色彩豊かで、どこか幻想的な雰囲気を漂わせていました。これらの作品を通じて、メアリーはディズニーアニメーションに新しい風を吹き込み、その後の作品に大きな影響を与えました。

イッツ・ア・スモールワールドと晩年

1953年にディズニーを退社した後も、メアリーの創作意欲は衰えることを知りませんでした。彼女は、広告やイラストレーションの分野で活躍し、その才能を多岐にわたって発揮しました。また、1964年のニューヨーク万国博覧会のために制作された、ディズニーランドの人気アトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」のコンセプトアートを手がけたことも、彼女の業績として特筆されます。このアトラクションは、世界中の子供たちの平和への願いを表現したもので、メアリーの色彩感覚とデザインセンスが、見事に結実した作品と言えるでしょう。

メアリー・ブレアは、1978年に66歳でこの世を去りましたが、彼女の作品は今もなお、世界中の人々を魅了し続けています。彼女がディズニーにもたらした革新的なスタイルと、色彩豊かな夢の世界は、後世のアーティストたちに大きな影響を与え、アニメーション史にその名を深く刻んでいます。

参考文献

増田春雄　「メアリー・ブレアの生涯」『美術手帖』　2009年8月号、美術出版社、108-113頁。

外部リンク

メアリー・ブレア展 東京都現代美術館 - ウェイバックマシン（2009年3月22日アーカイブ分）
* メアリー・ブレア - IMDb（英語）

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