メイン・ソース

メイン・ソース (Main Source): 伝説と幻に彩られたヒップホップグループ

メイン・ソースは、1980年代後半から1990年代前半にかけて、ニューヨークを拠点に活動したヒップホップグループです。DJ/プロデューサーのK-CutとSir Scratchの兄弟、そしてMC/プロデューサーのThe Large Professorという、才能あふれる3人によって結成されました。

結成と初期の活動

The Large Professorことウィリアム・ポール・ミッチェルは、クイーンズ区フラッシングで育ちました。そこで出会ったのが、カナダのトロントから移住してきたK-CutとSir Scratchのマッケンジー兄弟です。彼らは意気投合し、K-Cut兄弟の母親の支援のもと、1989年にメイン・ソースを結成しました。The Large ProfessorがMCとプロデューサーを兼任し、K-CutとSir ScratchがDJを務めるという編成でした。

1989年にシングル「Think b/w Atom」でレコードデビューを飾り、翌1990年には「Watch Roger Do His Thing」をリリース。メンバーはまだ高校生でしたが、その才能は早くから注目を集めていました。

ワイルド・ピッチ・レコードとの契約と躍進

勢いに乗ったメイン・ソースは、Gang StarrやLord Finesseらが所属していた名門レーベル、ワイルド・ピッチ・レコードとの契約を獲得。1990年10月には、シングル「Looking at the Front Door」をリリースし、BillboardのHot Rap Songsチャートで1位を獲得する大ヒットとなりました。1991年7月には、デビューアルバム『Breaking Atoms』を発表。このアルバムは、Nasのデビュー曲「Live at the Barbeque」を収録したことで、ヒップホップ史にその名を刻みました。

1992年には、The Brand New Heaviesのアルバム『Heavy Rhyme Experience, Vol. 1』に参加し、「Bonafied Funk」を提供。映画『White Men Can't Jump』のサウンドトラックにも新曲「Fakin' the Funk」を提供するなど、その活動は多岐にわたりました。

幻のセカンドアルバム『The Science』

多忙を極める中、メイン・ソースはセカンドアルバム『The Science』(仮題) の制作に取り掛かりました。しかし、1992年頃、The Large Professorがグループを脱退。アルバムはお蔵入りとなってしまいました。

脱退の背景には、K-Cut兄弟の母親が経営するマネジメント体制への不満があったとされています。報酬の配分を巡り、The Large Professorと兄弟の間に溝が生まれたことが原因でした。The Large Professorの脱退後、Mikey Dが加入しますが、1994年にリリースされたアルバム『Fuck What You Think』は評価が分かれました。

解散、そして再評価

The Large Professorは、その後ソロとして、またプロデューサーとして活躍。Nasの『Illmatic』など、数々の名盤を手がけました。一方、K-Cutもプロデューサーとして、幅広いアーティストに楽曲を提供しています。

メイン・ソースは短命なグループでしたが、その音楽性は後のヒップホップシーンに大きな影響を与えました。The Large Professorの革新的なサウンド、Nasのデビュー、そして幻のセカンドアルバム『The Science』の存在は、今もなお多くのヒップホップファンを魅了し続けています。

2023年には、幻のセカンドアルバム『The Science』が遂に公式リリース。日本独自のCD化として実現しました。また、The Large Professorは2002年にオリジナルメンバーで再結成し、コンサートを行いました。メイン・ソースは、一度は解散したものの、その音楽は時代を超えて愛され続けています。

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