メガネザル

メガネザルは、哺乳綱霊長目メガネザル科に分類される霊長類の総称です。現生ではメガネザル科のみでメガネザル型下目を構成しています。東南アジアの島嶼部、特にウォレス線にまたがって分布しています。

形態

メガネザルの最大の特徴はその大きな眼です。眼は前方に位置し、立体視が可能です。しかし、眼球は眼窩内でほとんど動かすことができません。そのため、首を自在に動かすことで広い視野を確保しています。驚くべきことに、首を180度回転させて真後ろを見ることもできます。1つの眼の重さは約3グラムで、これは脳の重さとほぼ同じです。この巨大な眼は夜行性に適応しており、暗い場所でもよく見えますが、昼間は眩しく感じます。また、タペータム（網膜裏側の反射膜）を持たないため、眼を大きくすることで夜間の光を捉えるように進化したと考えられています。

後肢は長く、跳躍力に優れています。体長の25倍もの距離を跳躍することができます。手足の指は長く、指先には鋭い爪と肉趾という円盤状のふくらみがあり、木からぶら下がるのに役立っています。尾は体よりも長く、ほとんど毛がありません。体重は100グラム程度の小型の霊長類です。

分類

かつては原猿亜目に分類されていましたが、タペータムがないことや鼻先が湿っていないなど、他の原猿類とは異なる特徴を持つため、現在はメガネザル科として独立しています。19世紀には、本科のみでメガネザル亜目を構成し、霊長目を3亜目に分ける説もありました。

かつては旧メガネザル属のみで構成され、3種（ニシメガネザル、ヒガシメガネザル、フィリピンメガネザル）が認められていましたが、2010年に分布や形態、染色体数の違いから、ニシメガネザルがCephalopachus属、フィリピンメガネザルがCarlito属に分けられ、3属に分割されるようになりました。さらに、2017年にはスラウェシメガネザルの個体群から2種、2019年にはトギアン島個体群から1種が新種として記載されました。

以下は、メガネザル科の分類です。各属の特徴と、代表的な種を記します。

フィリピンメガネザル属 Carlito**
分布：フィリピン
特徴：耳は短い（3cm未満）。上顎の犬歯は大型。乳頭数は2対。染色体数は2n=80。メスとその幼獣による小さな群れを形成します。
種：Carlito syrichta（フィリピンメガネザル）

ニシメガネザル属 Cephalopachus**
分布：スマトラ島、ボルネオ島および周辺の島嶼
特徴：耳は短い（3cm未満）。上顎の犬歯は大型。乳頭数は3対。染色体数は2n=80。ペアとその幼獣からなる家族群を構成します。
種：Cephalopachus bancanus（ニシメガネザル）

メガネザル属 Tarsius**
分布：スラウェシ島および周辺の島嶼
特徴：耳は長い（3cm以上）。上顎の犬歯は小型。乳頭数は3対。染色体数は2n=46（ダイアンメガネザル）。ペアとその幼獣からなる家族群を構成しますが、8頭に達する群れを形成することもあります。
種：Tarsius dentatus（ダイアンメガネザル）、Tarsius fuscus（マカッサルメガネザル）、Tarsius lariang（ラリアンメガネザル）、Tarsius niemitzi（トギアンメガネザル）、Tarsius pelengensis（ペレンメガネザル）、Tarsius pumilus（ピグミーメガネザル）、Tarsius sangirensis（サンギヘメガネザル）、Tarsius spectrumgurskyae（グルスキーメガネザル）、Tarsius supriatnai（ジャトナメガネザル）、Tarsius tarsier（スラウェシメガネザル）、Tarsius tumpara（シアウメガネザル）、Tarsius wallacei（ウォーレスメガネザル）

生態

メガネザルは全種が夜行性で、樹上生活を送っています。食性は動物食で、主に昆虫や節足動物を捕食しますが、時には爬虫類、鳥類、コウモリなども食べます。一年中繁殖が可能で、妊娠期間は約180日、1度に1子を出産します。生まれた子供は体毛が生えそろった状態で、すぐに自力で枝につかまることができます。

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