メキシコとアメリカの壁

メキシコとアメリカの壁について

メキシコとアメリカ合衆国の国境に沿って設置された壁（正式名称：Mexico–United States barrier）は、密輸や不法移民の流入を防ぐために設計された一連の構造物です。この壁は、一続きのものではなく、主に短距離のフェンスと物理的な壁が組み合わされています。物理的な壁が設置されていない場所には、高度なセンサーや監視カメラによる「仮想フェンス」が設けられ、国境警備隊が常時監視を行っています。

壁の長さと建設の背景

2009年1月時点で、アメリカ合衆国税関・国境警備局は930キロメートルを超える壁が設置されていると報告しています。国家の北部への国境線の全長は3,145キロメートルであり、この壁は特に違法行為が多発した地域に重点的に配置されています。

1994年、壁の建設は麻薬密輸と不法移民に対する大規模な作戦の一環として始まりました。この国境には、都市部、砂漠、山岳地帯など様々な地形があり、壁はカリフォルニア州のサンディエゴやテキサス州のエルパソなど、特に犯罪や密売が多い地域に設けられています。

2008年までに、国土安全保障省は310キロメートルの歩行者用フェンスと248.3キロメートルの車両用フェンスを建築しましたが、これに続く部分の工事はテキサス州で進行中です。

法律とコンセプトの変遷

2006年には「2006年安全フェンス法」が導入され、国境に1000キロメートル以上のフェンス建設が義務付けられました。この法律は、国境警備への資金を提供するために多くの論争を呼び、メキシコ政府や様々な人権団体からも批判の声が上がりました。

その後、フェンス計画についての再検討が求められ、環境への配慮が急務となったことから、設置方法や資金供給の議論は続いています。アリゾナ州では、仮想フェンスの拡張が停止されたことも報告されています。

壁の建設とその影響

ドナルド・トランプ政権下では、壁の建設が新たに強調され、国境に「通過不可能な具体的な障壁」を設けるとの方針が示されました。しかし、実際には壁の効果性について疑問の声が多く上がっており、特に不法移民による密入国を阻止する成功例は限られています。壁の下にトンネルを掘る方法や、フェンスを乗り越える工夫が広まっているためです。

1984年から2007年の間に、米国国境で約5,000人の移民が死亡したと報告されていますが、壁の設置が逆に死者を増加させる結果になっているという見解もあるため、非常にデリケートな問題となっています。

また、この壁が動物の生息地を脅かし、環境への影響も懸念されています。環境団体からは生態系への損害を指摘され、蝶や絶滅危惧種の保護が求められています。

今後の展望

今後の国境政策に関する議論は続くでしょう。壁の有効性や倫理的問題は引き続き議論されており、移民政策の包括的な改革が求められる中、国境の壁は一つの象徴としての役割を果たし続けることになるでしょう。

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