メタ新世界

メタ新世界の概要

『メタ新世界』は、1982年に山本昭一によって製作された詰将棋です。この作品は941手という長大な手数を持ち、1986年に橋本孝治が発表した『ミクロコスモス』が登場するまで、最長手数の詰将棋として知られていました。

寿からメタ新世界までの歴史

江戸時代に伊藤看寿が発表した611手詰の『寿』は、詰将棋の革新の第一歩となりました。その後、200年の時を経て、奥薗幸雄は873手詰の『新扇詰』を発表し、記録を更新します。この二作品は、特に「龍追い」と呼ばれる手法を用い、追加の技術として「持駒変換」や「と金はがし」が使われています。

1974年には上田吉一が、持ち駒変換の技法を重点的に用いた作品『積分』を発表し、多くの詰将棋作家がこの技法に基づいて長手数の作品の創作に着手しました。1981年に入ると、山本は515手詰の『メガロポリス』を、添川公司は393手詰の『呪われた夜』、森長宏明は613手詰の『新世界』を発表します。同時期に同様の趣向の作品が集中的に登場したこの状況は、詰将棋界にとって非常に興味深い出来事でした。

これらの作品を踏まえ、1982年に『メタ新世界』が発表されました。山本は既に『メガロポリス』を作成していましたが、持駒変換の手法は『新世界』に近いものでした。タイトルからも、両者の関連性が感じられます。

発表後、森長はショックを受け、一時的に詰棋界から引退したことも注目されました。詰棋専門誌では意見交換も行われ、当時は大きな話題として取り上げられました。

メタ新世界の趣向

『メタ新世界』においては、いくつかの革新的な趣向が取り入れられています。以下にその主な技術をまとめます。

持駒変換

この趣向は、合駒を使って持ち駒を他の駒に変換する技法です。『メタ新世界』では、「歩」から「香」、さらに「角」への変換が行われます。ただし、この作品では駒が2枚にわたって変換されるため、手数が倍増する結果となっています。具体的な過程を示すと、例として「▲63龍△同玉」などの手順を経て、持ち駒AがBに変わります。この際、相手の駒の動きによって収束のタイミングが変わることもあります。

連取り・と金はがし

連取りの手法は、空き王手を利用して、王と離れた位置にある駒の集団を削除するものです。一方で、はがしの手法では、駒の集団を適切に移動させることで除去を行います。いずれの手法も、持ち駒に影響を及ぼすため、変換作業が頻繁に必要となります。特に例として、特定の手順である「▲55角△54玉」の後に複数の駒をまとめて除去することが挙げられます。

執り行うべき手順の中で、特定の駒が除去されると容易に詰みに至ります。このため攻め側はこれらの駒を優先的に排除することを目指します。

この『メタ新世界』は、持駒変換と連取り・と金はがしの技法を駆使した独自の長手数作品であり、詰将棋の新しい可能性を切り開いたとも言える重要な作品となっています。

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