メテオ (映画)

SFパニック映画『メテオ』：未曾有の危機と冷戦下の協力

1979年製作のアメリカ映画『メテオ』は、巨大隕石の地球衝突という未曽有の危機を描いたSFパニック映画です。アポロ群小惑星の衝突によって生じた破片が地球に接近、そのうち最大の破片は直径約8キロメートルにも及ぶ巨大隕石で、1か月後に地球に衝突すると予測されます。衝突による大規模な被害と、巻き上げられた土砂による氷河期到来の可能性も示唆され、世界は未曽有の危機に直面します。

この作品は、1950年代の『地球最後の日』に始まる天体衝突パニック映画の流れを汲む作品であり、当時の米ソ冷戦やSDI構想といった時代背景を色濃く反映しています。地球への隕石衝突という共通の脅威に対し、アメリカとソ連が協力して危機に対処するという、冷戦下の緊張感と国際協力の葛藤が物語の中心に据えられています。

アメリカ政府は、核ミサイル14基を搭載した衛星攻撃兵器「ハーキュリーズ」を用いた隕石破壊作戦を計画します。しかし、この兵器は当初対ソ兵器として開発されたものであり、開発者である科学者ポール・ブラッドレーは、その軍事転用を快く思っていません。さらに、軍部は対ソ問題を優先し、ハーキュリーズの使用に反対します。

大統領の決断によりハーキュリーズの使用が決定しますが、その威力だけでは隕石の破壊は不可能と判明します。そこでブラッドレーは、ソ連にも同様の兵器が存在する可能性を指摘し、両国の協力による隕石破壊を提案します。

様々な政治的駆け引きの後、ソ連の科学者デュボフ博士と助手タチアーナがアメリカに招聘されます。当初は消極的だったデュボフ博士ですが、小型隕石の落下と、それを軽視するアメリカ軍部の傲慢な態度を目の当たりにして、ソ連の同等兵器「ピョートル大帝」の存在と使用を軍部に打診します。

「ピョートル大帝」と「ハーキュリーズ」による同時発射作戦が計画されますが、発射直前にニューヨークへの隕石落下が予測されます。発射準備のため、関係者は地下機密センターから離れることができません。緊迫した状況の中、発射の時刻が迫ってきます。

『メテオ』は、単なるパニック映画にとどまらず、冷戦構造下における国際協力の必要性や、科学技術の軍事利用の危険性といった社会的な問題提起も孕んだ作品です。また、後の『ディープ・インパクト』や『アルマゲドン』といった作品にも影響を与えた先駆的な作品と言えるでしょう。しかし、現在に至るまでDVD化されていないという点も特筆すべき点であり、この作品が持つ文化的価値の再評価が望まれます。

本作品は、迫力ある映像と緊迫したストーリー展開で、観る者を隕石衝突の危機へと引き込みます。冷戦という時代背景と、それを乗り越えようとする人間のドラマが交錯する、見応えのある作品です。

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