メナシクル

メナシクルについて

メナシクル（メナスンクル、メナシウンクル）は、アイヌ民族の一集団で主に静内以東の太平洋沿岸地域に居住していました。この名称は特に「シャクシャインの戦い」で名前が知られるようになり、シャクシャインが率いていた集団がメナシクルとされています。その範囲については様々な見解がありますが、一般的には日高の静内から釧路・厚岸に至る広大な地域を指すと考えられています。

メナシの語源

「メナシ」という言葉の原義は、強風や時化を引き起こす風として理解されており、アイヌの人々は川を境に「東風の吹いてくる方」をメナシ、「西風の吹く方」をスムと呼びました。これはつまり、メナシは「東」を意味するようになったのです。アイヌの地域名が和人の地域区分を逆輸入しているのではないかとする説がある中で、この名称の変遷はアイヌ文化の独自性を物語っています。

シャクシャインの時代

メナシクルに関する最古の記録は17世紀初頭にさかのぼります。1618年にアンジェリスによって書かれた報告書にはメナシという名前が登場し、1615年の『新羅之記録』では「東隅」という名前で記録されていることから、メナシがどのように存在していたかが示唆されています。当時のメナシクルは、静内川から捫別川一帯を勢力圏としていたとされ、シャクシャインはその矢面に立つリーダーでした。

アイヌ文化との関係

メナシクルには、日高南部と十勝・根室一帯に居住する集団が存在しました。日高南部の集団は「メナシウンクル」、十勝-根室に住む集団を「シメナシュンクル」と呼ぶことが記されており、後者は和人が示す「道東」と符合します。これらの地域には、独特な墓標が残されており、男性の墓はY字型、女性の墓は地域によって異なるデザインが施されています。

考古学的観察によれば、メナシクル地域には「砦」としての性格をもつチャシが見つかっています。これは、メナシクルがアイヌ文化を遅れて受容し、その過程で発生した交易に伴う抗争の表れと考えられています。

歴史的背景とシャクシャインの戦い

シャクシャインの戦いは、メナシクルの歴史の中で大きな位置を占める出来事です。1653年、メナシクルのリーダーであるカモクタインがハエクルのリーダーオニビシに討たれる事件が起こり、その後の改革や抗争が引き金となりました。シャクシャインは松前藩の政権打倒を目指しましたが、その過程で敗北し、むしろ松前藩の影響力が強化されました。

1789年には、メナシクルがクナシリ・メナシの戦いを起こしましたが、これも松前藩によって制圧されました。

結論

メナシクルという集団は、アイヌ文化の重要な一部であり、その歴史は地域の社会構造や文化に大きな影響を与えてきました。シャクシャインの時代を通じての奮闘や、アイヌの人々がどのようにして生存をかけた抗争を繰り広げてきたのか、そしてその後の松前藩との関係が如何にあったのかを理解することは、アイヌの歴史を深く知るために欠かせない要素となります。

もう一度検索