メモリアル (人権団体)

メモリアル：ロシアの人権団体の歴史と活動

メモリアル（ロシア語: Мемориал）は、ソビエト時代における人権侵害と政治的弾圧の歴史を記録・保持することを目的としたロシアの人権団体です。1987年に設立され、その後、ロシア国内や国外に支部が展開されました。2022年にはその活動が評価され、ノーベル平和賞を受賞しています。

設立の背景と初期の活動

メモリアルの設立は、ソビエト連邦の改革運動であるペレストロイカ最中の1987年にさかのぼります。この時期、当局による抑圧が続く中で、過去の暴力や不正を記録し、被害者を追悼するための組織が必要とされていました。設立当初から、メモリアルは反体制派の活動家や研究者によって運営され、特にソビエト政権下の政治弾圧の被害者記録や支援活動を行いました。

メモリアルの初期の活動は、77年に発表されたアレクサンドル・ソルジェニーツィンの著作『収容所群島』などを受け、過去の文書や証言を集めることに焦点を当てていました。

活動の広がりと支部の設立

メモリアルはその後、ロシア国内に多くの地域支部を設立しました。これらの支部は、地域ごとの歴史の記録や教育プログラム、追悼行事を行っています。例えば、靴や記念碑の設置を通じて、政治的抑圧の犠牲者の記憶をサポートしています。また、各地のメモリアルは独自のウェブサイトも運営し、地域ごとの調査や教育活動を行っています。

政府からの圧力

2012年の「外国エージェント法」の導入を受け、メモリアルも政府からの圧力に直面しました。この法律により、外国から資金を得ている団体は「外国エージェント」として登録しなければならなくなり、メモリアルはその影響を受けました。2014年には人権センターが「外国エージェント」と認定され、その後サンクトペテルブルク支部やインターナショナル・メモリアルも同様に指定されました。最終的には、2021年のロシア最高裁判所による閉鎖命令に至るまで、さまざまな形での圧力が続きました。

また、追悼活動や研究活動を妨害する試みも行われ、訴訟や家宅捜索が行われることもありました。これに反対する市民の声や国際的な支援もあったものの、メモリアルの活動は困難を極めています。

追悼活動と公募

メモリアルは毎年10月30日を「政治的抑圧の犠牲者を追悼する日」と定め、全土でイベントを行っています。この日は、ソロヴェツキーの石にて犠牲者を記憶する式典が行われ、多くの人々が参列します。また、メモリアルのデータベースには、300万人以上の政治的弾圧の犠牲者が記録されています。このデータベースは、過去の抑圧の実態を記録する重要な資料となっています。

研究、教育、メディア活動

メモリアルは、若者向けの教育プログラムも実施しており、市民社会の成熟や歴史的な真実の理解を促進するための様々なプロジェクトが進められています。また、オンラインでの情報提供や出版活動にも注力しており、その成果は国内外のメディアで取り上げられることが多くなっています。

結論

メモリアルは、政治的弾圧の記憶を保持し、教育を通じて市民社会の発展を推進する重要な団体です。しかし、政府からの厳しい圧力にさらされながら、その活動を続けることは容易ではありません。今後のその動向は国内外で大きな関心が寄せられています。

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