メラニン細胞刺激ホルモン

メラニン細胞刺激ホルモン（MSH）

メラニン細胞刺激ホルモン（メラニンさいぼうしげきホルモン、英：Melanocyte-stimulating hormone、略称：MSH）は、ペプチドホルモンの一つであり、主に下垂体中葉から分泌される神経ペプチドです。MSHには、α-MSH、β-MSH、γ-MSHの3つの異なるタイプがあり、各々が異なる生理機能を担っています。特に、α-MSHは分子量が1664.9で、さまざまな生物学的作用を持つことが知られています。

作用メカニズム

MSHの主要な機能は、皮膚や毛髪のメラニン細胞において、チロシナーゼという酵素の活性を高め、メラニンの合成を促進することです。メラニンは肌の色を決定づける重要な色素であり、その合成が増えることで、皮膚や毛髪の色はより濃くなる傾向があります。

また、α-MSHは視床下部に作用し、食欲や性的興奮を刺激する役割も果たしています。これにより、体内のエネルギーバランスや生殖行動に影響を与えることがあります。

動物におけるMSHの役割

動物界の中でも、特に両生類において、MSHは重要な役割を果たしています。アフリカツメガエルのような両生類は、薄暗い環境にいる際にMSHの合成が増加し、体色を暗くすることで捕食者から身を守る戦略を持っています。この過程で、メラニンが皮膚の色素細胞に分散し、黒色素胞という構造が形成されます。このため、両生類においてはMSHが「黒色素胞刺激ホルモン」とも称されることがあります。

ヒトにおけるMSHの影響

ヒトの場合、MSHは妊娠中にエストロゲンと共に増加し、これが妊婦の皮膚の色素沈着を引き起こす原因となることがあります。また、クッシング症候群やアジソン病といった病状とも関連があります。特にクッシング症候群は、過剰な副腎皮質刺激ホルモンの分泌によって発生し、これが肌の色素沈着を増加させることが知られています。アジソン病では、日光にあまりさらされない肌の部分が黒ずむことがあり、これは色素沈着の一種です。

MSHの構造

MSHは、メラノコルチンという一群のホルモンに分類され、このグループには他にもACTH（副腎皮質刺激ホルモン）などが含まれています。これらのホルモンは、似たようなアミノ酸配列を持ち、同様の生理的メカニズムに関与しています。そのため、MSHの研究は、他のホルモンとの相互作用を理解するためにも重要です。

関連項目

• - メラノスタチン：MSHの作用を抑制するペプチドホルモン。
• - ネルソン症候群：下垂体腫瘍によって引き起こされる症候群で、MSHの分泌が関与することがあります。

このように、メラニン細胞刺激ホルモンは、生理学的な役割と医学的な影響において非常に重要なペプチドホルモンの一つです。

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