メリーベル・ポーツネル

メリーベル・ポーツネル：永遠の少女の肖像

メリーベル・ポーツネル（1744年 - 1879年）は、萩尾望都による不朽の名作『ポーの一族』の主要なヒロインの一人です。彼女は、その可憐な容姿と悲劇的な運命で、多くの読者の心を捉えてきました。ここでは、メリーベルの生涯、人物像、そして作品における彼女の役割について詳しく解説します。

生い立ちとバンパネラとしての宿命

メリーベルは、イギリス貴族のエヴァンズ伯爵と愛人メリーウェザーの間に生まれました。幼い頃、兄エドガーと共に森に捨てられますが、老ハンナ・ポーに拾われ育てられます。しかし、ハンナの正体はバンパネラ（吸血鬼）であり、メリーベルは7歳の時、一族の秘密を知ってしまいます。妹を巻き込むことを恐れたエドガーの決断により、彼女はロンドンのアート男爵家に養女として引き取られることになりました。

運命に翻弄された少女時代

ロンドンで兄との再会を待ち望むメリーベルは、13歳の時にエヴァンズ伯爵家の兄弟、オズワルドとユーシスに出会います。彼女はユーシスと恋に落ちますが、悲劇的な事実が明らかになります。エヴァンズ伯爵はエドガーとメリーベルの実父であり、ユーシスはオズワルドの異母弟だったのです。実の娘に最愛の息子を奪われることを恐れた伯爵夫人によって、ユーシスは自ら命を絶ち、メリーベルはエヴァンズ伯爵家の養女となります。その後、彼女はバンパネラとなったエドガーと共に生きることを選び、ポーツネル男爵夫妻の養女として、永遠の時を生きることになります。

アラン・トワイライトとの出会いと別れ

100年以上もの時を経た1879年、メリーベルは新しい仲間を求めて訪れた市（シティ）でアラン・トワイライトと出会います。亡き婚約者に瓜二つのメリーベルに恋をしたアランは、彼女にプロポーズしますが、一度は断られます。しかし、アランの真摯な想いに触れたメリーベルは、彼を「ときをこえて遠くへいく」旅に誘います。しかし、その後、メリーベルはジャン・クリフォード医師によってバンパネラであることが見破られ、銀の弾丸によって消滅してしまうのです。

人物像：永遠の少女の多面性

メリーベルは、濃い茶色の瞳と銀色の巻き毛を持つ13歳の少女として描かれています。彼女の登場シーンでは、しばしば「すきとおった銀の髪」の歌が歌われます。明るく純真で可憐な彼女は、多くの人々を魅了しました。人間の生き血を吸うバンパネラでありながら、吸血行為を忌避する様子も見られます。

しかし、彼女の弱々しいイメージは、瀕死の重傷を負った「ポーの村」や、消滅した「ポーの一族」の印象に強く影響されています。人間であった頃や一族に加わった当初は、活発で木登りやスケートを楽しむ一面もありました。性格面でも、人間時代は我が強く狂信するタイプでしたが、一族の血が合わなかったためか、徐々に身体が弱くなり、儚さが増していきました。

バンパネラになってからも、エドガーのように人間に戻りたいとはほとんど思っていません。しかし、楽しそうに歌を歌ったり、アーネストやアランに告白された際に申し訳なく思ったりする姿から、人間であった頃と変わらない心を持ち続けていたことがうかがえます。彼女の心は常に兄エドガーによって占められており、その愛情は彼女の行動の原動力となっています。

メリーベルの名前の由来

作者の萩尾望都は、エドガーの名前の由来をエドガー・アラン・ポーであると明かしていますが、メリーベルの名前の由来については明らかにしていませんでした。そのため、様々な説が存在していましたが、2018年4月に「「メリーベル」は「メリー××」にしたいと思ったから。「メリーベル」のベル (belle) には「美しい」という意味が含まれているので、自分でもぴったりとしたものがつけられたと思った。」と作者自身が明かしました。

他作品への影響

メリーベルは、その魅力的なキャラクターから、多くの作品に影響を与えています。栗本薫の『ぼくらの時代』や、笹本祐一の『ハレーション・ゴースト』、川原泉の『笑う大天使』など、様々な作品で彼女のパロディや引用が見られます。また、『∀ガンダム』のメリーベル・ガジットや、『ハチミツとクローバー』の花本はぐみなど、彼女からインスピレーションを受けたキャラクターも存在します。

メリーベル・ポーツネルは、『ポーの一族』という作品を彩る重要なキャラクターであり、その永遠の少女としての姿は、これからも多くの人々の心に残り続けるでしょう。

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