メルセデス・ベンツ・M156エンジン

AMG V8エンジンの傑作：M156型エンジンの魅力

メルセデス・AMGが2006年から2010年にかけて生産したM156型エンジンは、自然吸気V型8気筒エンジンとして高い評価を獲得しました。メルセデス・ベンツのハイパフォーマンスモデルに搭載され、その力強い走りと洗練された技術は、多くの自動車ファンを魅了しました。

E63 AMGからSLS AMGまで：幅広い車種への搭載

M156エンジンは、メルセデス・ベンツEクラスのE63 AMGに初搭載された後、SLクラスなど、様々なモデルに搭載されました。これにより、それまで55AMGシリーズとして知られていたモデルが、63AMGシリーズへと移行するきっかけとなりました。これは、M156エンジンの高出力化と、それまでの過給機付きM113エンジンの置き換えを象徴する出来事でした。

6.2リッターの排気量が生み出す圧倒的なパワー

M156エンジンの排気量は6,208ccと大排気量であり、最高出力は336kWから386kW（457psから525ps）と、自然吸気エンジンとしては非常に高いパワーを発生させました。このパワーを生み出すために、吸排気両方のカムシャフトに位相変化機構が採用されており、エンジンの回転数や負荷に応じて最適なバルブタイミングを実現していました。さらに、熟練の技術者による手作業による組み立てと、ヘッドカバーに刻まれた技術者のサインは、このエンジンの特別な地位を示す象徴と言えるでしょう。

後継エンジンM157へのバトンタッチと、C63 AMGクーペへの継続採用

2010年には、ツインターボチャージャーを搭載したM157エンジンがM156の後継として登場しました。ダウンサイジングと過給技術の採用により、M157エンジンはM156エンジンよりも高い効率性を実現しました。しかし、M156エンジンの魅力はその後も引き継がれ、2011年にマイナーチェンジされたC63 AMGクーペにも、M157エンジンではなく、M156エンジンが搭載されました。これは、M156エンジンの高い信頼性と、自然吸気ならではの独特のフィーリングが評価された結果と言えるでしょう。

更なる高出力化：SLS AMG搭載のM159

M156エンジンは、メルセデス・ベンツSLS AMGにも搭載されました。SLS AMGに搭載されたM159エンジンは、M156エンジンをベースに更なる改良を加えたもので、最高出力は420kW（571ps）、最大トルクは650Nmにまで向上しました。アルミニウム製のクランクケースやマグネシウム製のインテーク、鍛造ピストン、そしてドライサンプ方式といった、高度な技術が惜しみなく投入されています。市販車への搭載はSLS AMGのみでしたが、その高いポテンシャルは、AMG GT3レースカーへの継続採用という形で受け継がれています。レースカーへの採用は、M156エンジンの耐久性とチューニングの容易さを示す証左と言えるでしょう。

まとめ

M156エンジンは、大排気量自然吸気V8エンジンならではの力強いトルクと高回転域での伸びやかさを両立した、まさにAMGの技術力の粋を集めたエンジンでした。後継エンジンが登場した後も、その魅力は色褪せることなく、多くの自動車ファンに記憶されています。その歴史と技術的な高さから、自動車史上に残る名機と言えるでしょう。

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