メルセデス・F1 W09 EQ Power+

メルセデスAMG F1 W09 EQ Power+：2018年シーズンの軌跡

2018年のF1世界選手権でメルセデスチームが使用したマシン、メルセデスAMG F1 W09 EQ Power+は、前年モデルW08の進化形として開発されました。W08で採用されたロングホイールベースと浅いレーキ角というコンセプトは踏襲しつつ、空力性能の向上に重点が置かれたマシンです。

マシンの特徴

W09は、W08と同様の突起のないノーズ先端を持つ一方で、サイドポンツーンの後部が大きく絞り込まれた形状が特徴です。サイドミラー周辺にはフェアリングが追加され、2018年から義務化されたHalo（ドライバー保護装置）との空力的な整合性が考慮されています。また、当時流行していた「ギアボックスウイング」もリアウイング下部に搭載されました。これらの空力設計により、ダウンフォースの最適化とドラッグの低減が図られています。

2018年シーズンの戦績

ドライバーはルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスのコンビで、シーズンを通して変更はありませんでした。

開幕戦オーストラリアGPではハミルトンがポールポジションを獲得するも、セバスチャン・ベッテルに優勝を奪われました。その後も、ベッテルやダニエル・リカルドらに勝利を譲り、シーズン序盤はタイトル争いの主導権を握るのに苦戦しました。

しかし、第4戦アゼルバイジャンGPでハミルトンがシーズン初勝利を挙げると、第5戦スペインGPではワン・ツーフィニッシュを達成するなど、徐々に調子を取り戻していきます。

シーズン中盤は、タイヤの性能を十分に引き出せないことに苦戦しました。メルセデスチームは、2014年以降はエンジンの圧倒的な性能でタイヤのマネジメントの問題をカバーしてきましたが、2018年はエンジンの優位性が小さくなったことで、その影響が顕著に表れたと分析しています。

しかし、チームは技術開発を継続し、ベッテルのミスやフェラーリの戦略ミスにも助けられながら、終盤戦では圧倒的な強さを見せつけます。特に、リアホイールの改良はブレーキ冷却性能を向上させ、タイヤのオーバーヒート問題の軽減に大きく貢献しました。フェラーリチームから合法性に疑問が呈されたものの、FIA（国際自動車連盟）によって合法と認められ、その効果を実感しました。

最終的に、ハミルトンはドライバーズチャンピオンを、メルセデスチームはコンストラクターズチャンピオンを獲得し、ダブルタイトルを獲得するという結果を残しました。これは、5年連続のダブルタイトル達成となります。

マシンスペック

W09は、カーボンファイバー製のモノコックシャシーをベースに、高度な空力設計と最新の技術を駆使して開発されました。

シャシー構造: カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造モノコック
パワーユニット: メルセデスAMG F1 M09 EQ Power+ (ICE、MGU-K、MGU-H、TC、ES、CE)
エンジン: V6 1.6L ターボ
ギアボックス: 8速セミオートマチック
重量: 733kg（冷却水、潤滑油、ドライバーを含む）
タイヤ: ピレリ

パワーユニットは、1.6L V6ターボエンジンにERS（エネルギー回生システム）を組み合わせたハイブリッドシステムです。MGU-KとMGU-Hは、それぞれ運動エネルギーと排熱エネルギーを回収し、加速に利用します。

まとめ

メルセデスAMG F1 W09 EQ Power+は、タイヤへの対応に苦戦したものの、ハミルトンの卓越したドライビングとチームの戦略、そしてマシンの性能向上によって、2018年シーズンを制覇したマシンです。W08からの進化と、シーズンを通して行われた改良が、タイトル獲得に大きく貢献したと言えるでしょう。タイヤ問題という課題を乗り越えたことで、メルセデスチームの技術力とチームワークの高さを改めて証明しました。

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