メルツェンビア

メルツェンビア (Märzenbier) とは

メルツェンビアは、ドイツ語で「3月 (März) のビール」を意味する下面発酵ビールです。その名の通り、かつては3月に醸造されていました。単に「メルツェン」と呼ばれることもあります。

概要

主にドイツ南部のバイエルン州やバーデン＝ヴュルテンベルク州で飲まれており、オクトーバーフェストには欠かせないビールとして知られています。提供には「マース (Maß)」と呼ばれる、0.5リットルから1リットル程度の大きなジョッキが用いられます。

『ビアスタイル・ガイドライン1208』では、ジャーマンスタイル・メルツェンとして以下の特徴が定義されています。

色合い: ゴールドから赤みがかったブラウン
風味: モルトの甘味がホップの苦味よりやや強く、トースト香が主体。カラメル香は軽微。
アルコール度数: 5.3%から5.9%
IBU (苦味指数): 18から25
* SRM (液色指数): 4から15

歴史

中世の時代、冷却技術が未発達だったため、ビール醸造は衛生上の観点から4月23日から9月29日の間は禁じられていました。そこで、長期保存を可能にするため、アルコール度数の高いビールが開発されました。メルツェンビアもその一つで、3月に醸造されることからこの名がつきました。

19世紀半ば、ウィーンの醸造家アントン・ドレハーがウインナーラガーを完成させ、そのレシピをミュンヘンのシュパーテン醸造所のガブリエル・ゼードルマイル2世に贈りました。ゼードルマイルはこのレシピを基に新たなメルツェンビアを開発し、オクトーバーフェストで販売したところ、大人気となりました。以降、メルツェンビアにはウィーン麦芽が使用されることが多くなりました。

近年では、オクトーバーフェストで提供されるメルツェンビアは、ピルスナーのような淡い色合いを好む観光客の嗜好に合わせ、色が薄くなる傾向にあります。

オクトーバーフェストとの関わり

中世の時代、ビールの醸造が再開される9月29日以降に、秋の収穫を祝うとともに、新しいビールの仕込みを始めるため、残っていたメルツェンビアを飲み干す祭りが行われるようになりました。これが、オクトーバーフェストの原型です。

現代では、3月に仕込んだメルツェンビアを夏の間熟成させ、オクトーバーフェストで飲む習慣から、メルツェンビアをオクトーバーフェストビールと呼ぶこともあります。

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