メロディIC

メロディIC：電子音の進化を支えた小さな巨人

メロディIC（電子オルゴールIC、電子発音装置とも呼ばれる）は、集積回路の一種です。この小さな部品は、アラームやメロディーといった電子音を発生させる役割を担い、私たちの生活に彩りを与えてきました。本記事では、メロディICの歴史、主要製品、そしてその多様な用途について詳細に解説します。

メロディICの黎明期：セイコーエプソンの功績

1978年、セイコーエプソンは世界初のメロディIC「SVM7910」を開発、発売しました。これは、同社が発売した「セイコークオーツアラーム電子メロディア」に搭載された画期的な技術でした。この成功を足掛かりに、セイコーエプソンは数多くのメロディICを開発・製造しましたが、現在は生産を終了しています。

多様なメロディIC：現在と未来

現在市場には、中国製のノーブランド品や、トランジスタと同じTO-92パッケージを採用した小型のメロディICも流通しています。これらは単一メロディーのシンプルなものから、複数のメロディーを内蔵したものまで多様な製品が存在します。また、メロディーだけでなく、動物の鳴き声や銃声、警報音といった効果音も内蔵したPCM（Pulse Code Modulation）方式のICも開発されており、用途はさらに広がりを見せています。

セイコーエプソン製メロディIC：主要製品一覧

セイコーエプソンは、数多くのメロディICを開発しました。以下に、データシートに記載のある主要製品を紹介します。OEMやカスタム製品なども存在しますが、ここでは代表的な製品に絞って説明します。

SVM7910

「7910」とも略称されるこのICは、最大2曲のメロディーとチャイム音、アラーム音を内蔵していました。2和音の音源とCRによるエンベロープ機能を備え、電話の保留音、警報機、鉄道の接近警告音、遊園地の遊具など、幅広い用途に採用されました。7910C、7910CE、7910CF、7910CWといったバリエーションも存在します。

SVM7920、SVM7930

SVM7920は1曲のみの単音メロディーを再生するICで、CRによるエンベロープ機能を搭載しています。主に電話の保留音に使用されました。SVM7930は7920と基本仕様は同じですが、パッケージが異なり、アンプ回路を内蔵しているため、トランジスタ回路でスピーカーを直接駆動できます。

SVM7940、SVM7950、SVM7960

SVM7940は最大8曲の単音メロディーを内蔵していますが、エンベロープ機能はありません。SVM7950は1曲の単音メロディーで、エンベロープ機能の有無で複数のモデルが存在します。SVM7960は7910の後継モデルとして1983年に開発され、最大4曲の2和音メロディーとエンベロープ機能を搭載、電話の保留音、ドアチャイム、インターホンなどに採用されました。

SVM7970、SVM7990、SVM7900

SVM7970は最大11曲の2和音メロディーを内蔵し、マスクオプションでデジタルまたはCRによるエンベロープ機能を選択できます。「セイコーファンタジア」などのからくり時計にも採用されました。SVM7990は最大8曲の単音メロディーとCRによるエンベロープ機能を搭載し、インターホンなどに使用されました。SVM7900は1曲の単音メロディーで、エンベロープ機能はありません。

SVM7800シリーズ(SVM7800, SVM7820, SVM7850, SVM7860)、SVM7500シリーズ(SVM7500, SVM7560, SVM7570)

SVM7800シリーズは1曲の2和音メロディーとCRエンベロープ機能を搭載し、主に家庭用電話機の保留音などに使用されました。SVM7500シリーズは最大15曲のメロディーを再生可能で、3つの異なる波形とノイズ（パーカッション）を組み合わせた4和音の音源とデジタルエンベロープ機能を搭載した高度なモデルです。SVM7570はパトライトの警報機や鉄道の接近メロディー、ホームドア開閉音など、現在でも様々な場所で聞くことができます。後期モデルはS1V7570という型番になっています。「スモールワールドジョイコンサート」などのからくり時計にも採用されています。

SVM7100

その他、セイコーエプソン以外のメーカーもメロディICを製造しています。シャープのLR3463/LR3461、パナソニックのMN6221などが代表的な製品です。これらの製品も、パトライトの警報機、鉄道の接近メロディー、遊園地の遊具など、様々な機器に採用されています。

まとめ

メロディICは、小さな部品ながら、私たちの生活に欠かせない電子音を奏でる重要な役割を担っています。セイコーエプソンによって世界で初めて開発されて以来、技術革新を続け、多様な製品が開発・製造されてきました。現在も多くの機器に採用され、その存在感を示しています。今後、さらに高度な音質や機能を持つメロディICが登場することが期待されます。

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