メークミルミル

メークミルミルとは、2010年のプロ野球シーズンにおいて、東京ヤクルトスワローズ（以下、スワローズ）が、シーズン序盤の不調から一転して見せた目覚ましい快進撃を指す言葉です。この名称は、読売ジャイアンツが過去にペナントレースで劇的な逆転優勝を飾った際に用いられた「メークドラマ」という表現と、スワローズの親会社であるヤクルト本社の人気乳性飲料「ミルミル」を巧みに組み合わせたものとなっています。また、「メイクミルミル」と表記されることもあります。

背景

2010年のスワローズは、開幕当初こそ3カード連続で勝ち越すなど、好調なスタートを切りました。しかし、4月中旬以降になるとチームは急激に失速し、連敗が続く一方で連勝はなかなか生まれないという状況に陥ります。特に、セ・パ交流戦が始まってからは全く勝利を挙げることができず、9連敗を喫するという泥沼の状態に陥り、当時の監督であった高田繁が休養を余儀なくされるという事態にまで発展しました。

しかし、事態はここから好転します。高田監督の休養に伴い、ヘッドコーチであった小川淳司が監督代行に就任すると、チームの成績は目に見えて上昇し始めたのです。一方、ヤクルト本社では、1978年から長きにわたり販売され、多くの人々に親しまれてきた「ミルミル」が、2005年に一旦「ビフィーネM」へと引き継がれ、その名前が一時的に消滅していました。しかし、2010年、ヤクルト本社は「ミルミル」の名称を復活させることを決定し、販売促進の一環として、スワローズのヘルメットとユニフォームに「ミルミル」のロゴを掲出することになりました。

ムーブメントの発生

チームが泥沼の状態から抜け出しつつあった7月頃から、スワローズの野球を「ミルミル野球」と称する記事が登場し始めました。そして、8月に入ると、2年ぶりとなる対巨人戦での同一カード3連勝を含む10連勝を達成するという快進撃が始まります。この連勝中の8月上旬から中旬にかけて、「メークミラクル」など、「ミルミル」を掛け合わせた言葉がインターネット上で頻繁に使用されるようになり、メディアの記事でもその表現が見られるようになりました。

8月24日には、最大で19あった借金を全て完済し、Aクラス入りが現実味を帯びてくると、ヤクルト球団はクライマックスシリーズ進出に向けた応援企画を「合言葉は“メイクミルミル” GO!CLIMAX!!」と銘打って実施しました。9月16日の主催試合では、大きく「ミルミル」と書かれたボードをファンに配布するなど、このフレーズは事実上、チームの準公認的なものとして扱われるようになりました。

結果とその後

最終的に、スワローズは4位でシーズンを終え、クライマックスシリーズへの進出は果たせませんでした。しかし、13勝32敗1分という最下位の状態から、72勝68敗4分とシーズン勝ち越しまでチームを立て直した小川淳司監督代行の手腕は高く評価されました。小川監督代行就任後の成績は59勝36敗3分であり、これは2010年のパ・リーグを含めた他11球団のどの監督の成績よりも高い勝率でした。まさに「ミラクル」と呼ぶにふさわしい成績を残したと言えるでしょう。

この成績が追い風となり、小川淳司は2011年シーズンから正式に監督に就任しました。2011年からは、ヘルメットの広告は同社製品である「タフマン」に変更されましたが、ユニフォームには引き続き「ミルミル」の広告が掲載されました。

翌2011年のシーズンも、スワローズは前半戦で2010年後半の勢いをそのままに首位を独走しました。しかし、夏場に入ると徐々に失速し始め、当時2位につけていた中日ドラゴンズが後半戦で調子を上げたことにより、ゲーム差は徐々に縮まりました。そして、9月と10月に行われた天王山での直接対決計8戦を1勝7敗で終えたことで、ついに中日に首位を明け渡してしまいます。その後、スワローズが再び首位に返り咲くことはなく、2位でシーズンを終えることとなりました。10年ぶりの優勝はなりませんでしたが、クライマックスシリーズ・ファーストシリーズでは読売ジャイアンツに2勝1敗と勝ち越し、球団史上初のファイナルステージ進出を果たしました。しかし、ファイナルステージでは中日に勝ち越すことができず、優勝目前で逆転された悔しさを下克上の反撃で日本シリーズの切符を再奪取するという夢を叶えることはできずに、東京ヤクルトスワローズの2011年シーズンは幕を閉じました。

メークミルミル