モスクワ地下鉄爆破テロ (2010年)

モスクワ地下鉄爆破テロ事件（2010年）

2010年3月29日、ロシアの首都モスクワの地下鉄で起きた自爆テロ事件は、瞬く間に多くの犠牲者を出し、近代のテロリズムにおける悲劇的な一例となりました。事件は午前7時55分から8時39分の間、ルビャンカ駅とパールク・クリトゥールイ駅という2つの駅で連続して爆発が発生しました。このテロは、当時さらに混雑しているラッシュアワーの時間帯に行われ、多くの通勤客を巻き込みました。

背景

このテロ事件は、過去のチェチェン紛争や関連するテロ事件に深く関わっています。1990年代末からのチェチェン紛争の終結後、チェチェンの分離独立派は、世俗的な立場からイスラーム原理主義へとシフトし、そこから生まれたイスラム過激派が繰り返しロシアに対するテロ攻撃を行ってきました。その背景には、北カフカスにイスラーム国家を樹立するという彼らの悲願が存在します。これにより、2002年以来、ロシア国内では5000人以上の人々がテロによって命を失うなど、深刻な事態が続いているのです。

事件の詳細

2010年3月29日の事件は、まずルビャンカ駅に停車中の列車で最初の爆発が発生しました。この爆発により、24人が死亡し20人が負傷しました。約30分後には、パールク・クリトゥールイ駅でも再び爆発が起こり、12人が死亡し15人が負傷しました。今回のテロは、平日の通勤時間帯に多くの人々が利用していた地下鉄駅で行われたため、その現場は大きな混乱に見舞われました。地下鉄の運行は数時間にわたりストップし、市内の交通網も大きく制約される事態となりました。

政府の反応

この事件を受けて、ロシア政府は強い姿勢で対応にあたり、ロシア検察は使用された爆弾の成分を特定するための調査を開始。防犯カメラ映像からは、2人の自爆犯が写っており、彼女たちが事件の重要な手がかりとなっていました。アレクサンドル・ボルトニコフ連邦保安庁（FSB）長官は、この事件が北カフカスの過激派と結びついていると報告し、ドミートリー・メドヴェージェフ大統領は、テロリストに対する徹底的な捜査と対策を指示しました。

捜査状況

捜査当局は、2人の女性が連続して自爆テロを行ったと考え、彼女たちの身元特定に努めました。そして、ルビャンカ駅で最初に爆発を起こしたのは、28歳の女性であることが発覚しました。また、パールク・クリトゥールイ駅の爆発を引き起こした犯人も特定され、その背景には過去のテロ事件に関係する未亡人が関連しているとされました。

犯行声明と国際反響

事件から数日後、北カフカスの武装勢力の指導者が、テロを「プーチン政権の北カフカス政策への報復」と位置付けた声明を出しました。国際社会は、この事件を受け、各国から哀悼の意とテロに対する明確な非難の声が寄せられました。特にカナダや国連からは、テロ行為に対する強い抗議がなされ、ロシア政府に対する支援が表明されました。

このモスクワ地下鉄テロ事件は、ロシア国内の安全保障とテロリズムの脅威について改めて考えさせられる出来事となりました。長引く紛争と極端な思想がもたらす影響が、今なお続いていることを示す痛ましい例です。

もう一度検索