モスクワ条約 (2002年)

モスクワ条約：米ロ間の戦略核軍縮の試み

2002年5月24日、アメリカ合衆国とロシア連邦は、戦略的攻撃能力の削減に関する条約、通称「モスクワ条約」を締結しました。正式名称は『アメリカ合衆国とロシア連邦との間の戦略的攻撃能力の削減に関する条約』（Treaty Between the United States of America and the Russian Federation on Strategic Offensive Reductions, SORT）です。本条約は、冷戦終結後の国際情勢下において、両国間の核軍縮を促進するための重要な一歩として位置づけられています。

条約の主要な内容

[モスクワ]]条約の核心は、両国の戦略核弾頭配備数の削減です。条約では、2012年までに、両国の戦略核弾頭数を1700～2200発に削減することを目標としています。しかし、単なる数値目標にとどまらず、条約の特筆すべき点は、核弾頭やその運搬手段（大陸間弾道ミサイル]、[潜水艦発射弾道ミサイル]、[[戦略爆撃機等）の廃棄義務を課していない点です。 各国の保有する核弾頭の種類や、その配備方法などは、それぞれが自主的に決定することが許されています。削減対象となった核弾頭であっても、保管することが認められている点も重要な要素です。

歴史的文脈

モスクワ条約は、米ロ間の核軍縮の歴史における重要な節目です。1969年から始まったSALT I、1972年のABM制限条約、SALT II、1987年のINF全廃条約、そしてSTART I、START IIと続く一連の軍縮交渉や条約の延長線上にあると言えるでしょう。これらの条約は、冷戦時代における軍拡競争の抑制、そして核戦争回避のために不可欠な役割を果たしました。モスクワ条約は、これらの取り組みを継承しつつ、新たな枠組みを構築しようと試みた条約と言えるでしょう。

新START条約との関係

モスクワ条約は、2010年に発効した新START（戦略兵器削減新条約）によって、その役割を終えました。新STARTは、モスクワ条約よりも詳細な規定を盛り込み、より厳格な核軍縮目標を設定しています。モスクワ条約は、新STARTへの移行のための暫定的な措置としての役割を果たしたと解釈できます。新STARTは、より包括的かつ厳格な枠組みを提供することで、米ロ間の核軍縮をさらに進展させることを目的としています。

モスクワ条約の意義と課題

モスクワ条約は、米ロ間の核軍縮に貢献した一方で、その法的拘束力や検証メカニズムの不足といった課題も指摘されています。条約は、核弾頭の廃棄義務を課していないため、実質的な核削減効果の検証が困難であるという指摘もあります。また、条約は、核兵器の運搬手段に関する規定が曖昧であるため、解釈の余地が残されています。しかしながら、冷戦終結後の複雑な国際情勢下において、米ロ両国が核軍縮に向けた意思表示を示したという点で、モスクワ条約は歴史的な意義を持つ条約と言えるでしょう。今後の核軍縮の取り組みにおいて、モスクワ条約の経験を活かし、より効果的な枠組みを構築していくことが重要です。

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