モスクワ講和条約

モスクワ講和条約（1940年）

モスクワ講和条約は、1940年3月12日、ソビエト連邦とフィンランドの間に署名され、同月21日に批准されました。この条約により、105日間続いた冬戦争は終結し、フィンランドはソ連に対して広範囲な領土を割譲することを余儀なくされました。

条約の署名

この条約は、ソ連側では外務人民委員のヴャチェスラフ・モロトフやレニングラード軍管区長官のアンドレイ・ジダーノフ、アレクサンドル・ヴァシレフスキーが署名し、フィンランド側はリスト・リュティ首相やユホ・クスティ・パーシキヴィらが名を連ねました。

条約締結の背景

フィンランド政府は1940年1月31日にソ連から暫定的な講和条件を提示されました。その内容は、カレリア地峡のフィンランド領の割譲、ヴィープリを含む重要地域の攻略、さらにはハンコ半島の30年間の租借でした。しかし、マンネルハイム線が守られていたこともあり、フィンランド軍は一定の抵抗を続けていたため、政府は提示された条件が過酷であると判断し、交渉の継続を決定しました。

しかし、ソ連軍の攻撃は続き、2月10日にはカレリア地峡において大規模な攻勢が開始され、フィンランド側の損失が増えていきました。国軍総司令官マンネルヘイム元帥は軍事見通しを悲観的とし、3月6日にフィンランド代表団がモスクワへ向かうことが決定されました。

講和の詳細

モスクワでの相互交渉の結果、講和条約は1940年3月12日に署名されました。特筆すべきは、条約の署名時にも戦闘を継続することが定められていた点です。フィンランドは、ソ連が提示した以前の条件を上回る、より厳しい条件を受け入れることとなりました。

具体的な領土割譲としては、以下の地域が含まれていました：

• - カレリア地峡全域（ヴィボルグを含む）
• - ラドガ湖の両岸
• - フィンランド湾内の各島
• - メルキャルヴィの東方地域
• - リバチ半島及びスレドニー半島の一部

この割譲は、フィンランド国民に深い衝撃を与えました。特に、カレリアはフィンランド文化の中心地と見なされており、この土地を失うことは精神的な打撃でもありました。また、42万以上のカレリア人が住居を失うこととなり、カレリア避難が発生しました。

さらに、フィンランドはハンコ半島の租借権を得ましたが、その年数は30年で、租借料金は年間800万マルクと設定されました。このように、トータルでフィンランドの工業力の約80%がソ連に移転される結果となりました。

講和の結果と影響

講和の後、フィンランドはソ連との関係が悪化したものの、戦略的な選択肢は限られていました。イギリスやフランスはフィンランドへの軍事支援を提案しましたが、フィンランドが講和を結んだことで、その選択肢もほとんど無くなりました。1940年夏、バルト三国がソビエト共和国化したことで、フィンランドは緊迫した国際情勢の中に置かれることになります。

その後、フィンランドはドイツと秘密協定を結び、1941年6月にはソ連との継続戦争に突入しました。そして、この講和条約がもたらした領土喪失と国際的な孤立が、フィンランドの歴史に深い傷跡を残すこととなったのです。

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