モセ砦の戦い

モセ砦の戦い：自由をかけた激戦

モセ砦の戦いは、1740年6月26日、ジェンキンスの耳の戦争中に勃発しました。スペイン軍と自由黒人兵士、セミノール族の戦士たちが、戦略拠点であるモセ砦をイギリス軍から奪還するために決行した戦いです。この戦いは、単なる軍事衝突にとどまらず、植民地時代の複雑な社会構造と、自由を求める人々の闘いを象徴しています。

戦いの背景：自由を求めて

モセ砦は、現在のフロリダ州サン・アウグスティンの北に位置し、1738年にスペインによって建設されました。その目的は、イギリスのジョージア植民地やサウスカロライナ植民地から逃亡してきた黒人奴隷を保護することでした。スペイン国王カルロス2世は1693年、イギリスから逃れてきた奴隷がカトリックに改宗し、スペインへの忠誠を誓うことを条件に、彼らを解放し保護するよう命じる勅令を発布していました。

この勅令に基づき、逃亡奴隷たちはカトリックに改宗し、軍事訓練を受けた後、自由を与えられました。モセ砦は、こうして誕生した北米初の自由黒人居住地となりました。砦には教会や木製の城壁、住居などが設けられ、約100人が生活していました。フランシスコ・メネンデス大佐に率いられた黒人民兵は、イギリス植民地にとって大きな脅威となりました。彼らは、自由人の集落として、またスペイン領フロリダを防衛する前線基地として機能し、イギリスのプランテーション経済を揺さぶる存在だったからです。

戦闘の勃発：奇襲と激戦

ジェンキンスの耳の戦争が勃発すると、ジョージア植民地総督のジェームス・オグルソープは、サン・アウグスティンを占領しようと試みました。その一環として、モセ砦の占領を計画。イギリス軍は砦を占拠しましたが、スペイン軍は黙ってはいませんでした。アントニオ・サルガド大佐率いるスペイン正規軍、フランシスコ・メネンデス率いる黒人民兵、そしてセミノール族の戦士たちは、1740年6月26日の夜明け前、モセ砦に奇襲を仕掛けました。イギリス兵がまだ寝静まっている時間帯を狙った攻撃は成功し、砦内では剣やマスケット銃、棍棒を使った激しい近接戦が繰り広げられました。この戦いで、イギリス軍は大きな損害を受けました。

戦いの結果とその後：自由への道のり

スペイン軍の勝利により、イギリス軍は戦意を喪失し、オグルソープは撤退を余儀なくされました。モセ砦は破壊されましたが、住民たちはサン・アウグスティンに移住し、その後も自由人として生活しました。1752年、スペインが砦を再建すると、彼らは再び砦に戻りました。しかし、七年戦争でイギリスが勝利し、フロリダがイギリスに割譲されると、スペイン人は住民や軍備をキューバに移送。フランシスコ・メネンデスをはじめとする自由黒人の多くも、再び奴隷にされることを恐れ、スペイン人と共にキューバへ渡りました。

モセ砦の戦いは、自由を求める人々の勇気と犠牲を物語る出来事です。この戦いは、植民地時代の複雑な社会構造の中で、自由を求めて戦った人々の存在を私たちに教えてくれます。

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