モリエール 恋こそ喜劇

モリエール 恋こそ喜劇：知られざる恋物語と傑作誕生の秘話

2007年公開のフランス映画『モリエール 恋こそ喜劇』は、世界的に有名な劇作家モリエールの若き日を鮮やかに描いたロマンティック・コメディです。歴史に記録されなかった彼の青年期に焦点を当て、後の名作を生み出すきっかけとなった隠された恋物語を、フィクションとして紡ぎ出しています。

波乱万丈の青春時代と運命の出会い

舞台は17世紀フランス。既に人気劇作家として名を馳せていたモリエールですが、喜劇以外の作品に挑戦しようと試みるも、周囲の期待は常に喜劇に向けられていました。そんな折、彼は自身の若き日の恋を思い出します。22歳のモリエールは仲間たちと劇団を旗揚げしますが、多額の借金を抱え、投獄の危機に瀕します。彼を窮地から救ったのは、裕福な商人ジュルダン氏でした。妻子を持つジュルダン氏は、美しい侯爵夫人セリメーヌに恋焦がれ、自作の劇を彼女に披露したいと考えていたのです。モリエールは借金の代わりに、ジュルダン氏に演劇指導をするという条件で釈放されます。

複雑に絡み合う人間関係と偽りの愛

借金の秘密を隠すため、モリエールは司祭タルチュフを名乗り、ジュルダン氏の家に潜入します。そこで、ジュルダン氏の妻エルミールと出会い、次第に二人は禁断の恋に落ちていきます。一方、ジュルダン氏はドラント伯爵にセリメーヌとの仲を取り持ってもらうことを依頼しますが、伯爵は実はセリメーヌの愛人で、ジュルダン氏から金を騙し取ろうとしていました。さらに、娘アンリエットを平民の青年ヴァレールと結婚させようとしたジュルダン氏は、伯爵の息子トマとの結婚を強引に進めようとしていました。エルミールは娘の幸せを願うあまり、伯爵に要求された莫大な金を用意することを約束してしまいます。モリエールはアンリエットの誘拐劇を計画し、エルミールは娘を失った母親を演じてジュルダン氏から金を得ようとしますが、アンリエットがヴァレールと喧嘩をして帰宅したことで計画は失敗に終わります。

偽りの仮面と真実の告白

ジュルダン氏はセリメーヌの真意を確かめるため、モリエールと共に策略を巡らせます。モリエールはジュルダン氏に女装をさせ、セリメーヌのサロンに潜入させ、彼女の真意を暴きます。セリメーヌはジュルダン氏を軽蔑し、彼のことを「たかが商人」と侮辱する言葉を残して去っていきます。ジュルダン氏はショックを受けますが、ドラント伯爵の悪行も明らかになります。しかし、伯爵は王族との繋がりを盾に、ジュルダン氏を脅迫し、アンリエットとトマの結婚を強行しようとします。

嘘と真実が交錯するクライマックス

ジュルダン氏が帰宅すると、妻エルミールがモリエールと密会していることに気づきます。モリエールはエルミールとの関係を告白し、アンリエットの結婚を阻止するよう懇願します。ジュルダン氏はモリエールが屋敷を去ることを条件に、彼の願いを聞き入れます。結婚式当日、ジュルダン氏の部下が「倉庫が全焼し、破産した」と叫んで駆け込み、伯爵は結婚を撤回して逃亡します。しかし、これはジュルダン氏が仕掛けた策略でした。こうして、アンリエットはヴァレールと結婚することになり、モリエールは約束通り屋敷を去ります。

喜劇作家としての成功と永遠の愛

13年後、モリエールは名高い喜劇作家となっていました。彼はエルミールやジュルダン氏などをモデルに新作喜劇を書き上げ、大成功を収めます。しかし、ある日、エルミールが病に倒れ、余命わずかなことを知ります。モリエールは涙ながらに見舞い、エルミールは彼にこれからも喜劇を書き続けるよう励まします。モリエールは、彼女との悲恋もまた「喜劇」として昇華させます。

映画としての評価

この映画はフランスで180万人を動員する大ヒットとなり、モスクワ映画祭では観客賞と男優賞を受賞しました。また、セザール賞では複数の部門にノミネートされ、高い評価を得ています。日本でもフランス映画祭で観客賞を受賞し、高い人気を博しました。

まとめ

『モリエール 恋こそ喜劇』は、歴史に隠された恋物語と、偉大な劇作家の誕生秘話を描いた、魅力的な作品です。複雑に絡み合う人間関係、笑いと涙、そして愛と別れが織りなすドラマは、観る者の心を深く揺さぶります。モリエールの天才性と人間性を深く理解できる、見応えのある映画です。

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