モルニヤ (人工衛星)

モルニヤ衛星

モルニヤ（ロシア語：Молния）は、ソビエト連邦及びその後継であるロシア連邦が運用している通信衛星です。この衛星は、特異な「モルニヤ軌道」と呼ばれる軌道を採用しており、すべての打ち上げは専用のモルニヤロケットによって行われています。初の試作機が1964年に打ち上げられ、現在でも運用が続いており、これまでに150機以上のモルニヤ衛星が打ち上げられています。

開発の歴史

モルニヤの開発が始まったのは1960年10月30日、ソ連の通信衛星開発に関する政府の命令が発令された日です。このプロジェクトは、名高いロケット開発者コロリョフが率いるOKB-1が担当し、1963年までに設計が完了しました。1964年には最初の打ち上げを行いましたが、ロケットの故障により失敗に終わりました。その後、8月22日に再度行われた打ち上げでは、衛星の軌道投入には成功したものの、通信機能の一部が正常に稼働しませんでした。1965年4月の3回目の打ち上げでようやく成功を収め、正式に「モルニヤ」という名前が与えられました。

初期のモルニヤ衛星は主に軍事通信に使用されていましたが、次第に改良が進み、後には民間利用も視野に入れられました。モルニヤの開発はOKB-1からレシェトネフに移管され、その改良が行われました。

設計と特徴

モルニヤ衛星は、全長約4.4m、直径1.4m（一部の仕様では異なる数値もあり）というコンパクトな設計で、内部は気圧を調整された密閉容器となっています。衛星内部の温度は管理され、外部には6枚の太陽電池パネルが放射状に配されたデザインで、まるで花や風車のように見えます。また、質量はモルニヤ1型で約1650kgであり、ロケットエンジンも搭載していて、軌道の変更が可能です。

当初の設計寿命は1年から2年でしたが、改良により次第に寿命が延びていきました。通信機器には「アルファ」や「ベータ」という送信機が搭載され、実用化に向けた改良が重ねられました。

モルニヤ軌道

モルニヤ衛星は、準同期軌道の一種であるモルニヤ軌道を用いています。この軌道設計は、特に高緯度地域での通信を効率的に行うために考案されました。近点高度500km、遠点高度40,000km、軌道周期は約12時間です。こうした設定により、地球の自転の影響を考慮した衛星配置が可能となり、高緯度地域においても通信条件を最適化することが出来ます。

運用状況

モルニヤ衛星は、複数機を組み合わせて運用されるため、常時通信可能なシステムを提供します。通常、何機かの衛星が交代で天頂に位置し、通信を行います。これにより、高緯度地域でも安定した通信が可能となるのです。2023年時点では、数十機のモルニヤ衛星が地球を周回しており、半数が軍事用、残りが民間用として利用されています。2005年6月以降、モルニヤ衛星の打ち上げは終了し、後継のメリディアン衛星シリーズが登場しています。

結論

モルニヤ衛星は、その独自の設計と運用方針により、通信衛星としての役割を果たしてきました。その特異な軌道を利用し、今日でも重要な通信手段として機能しています。

もう一度検索