モルヴィッツの戦い

モルヴィッツの戦い：プロイセン躍進の礎

モルヴィッツの戦いは、1741年4月10日、オーストリア継承戦争の初期にプロイセンとオーストリアの間で繰り広げられた会戦です。この戦いは、フリードリヒ大王率いるプロイセン軍が勝利し、プロイセンがヨーロッパの列強としての地位を確立する上で、重要な転換点となりました。

戦いの背景

1740年、神聖ローマ皇帝カール6世の死後、フリードリヒ大王はシュレージエンへの侵攻を開始します。わずか1カ月半で、グローガウ、ブリーク、ナイセといった要塞を制圧し、シュレージエンの大部分を掌握しました。オーストリアのマリア・テレジアは、シュレージエン割譲の提案を拒否し、ナイペルク将軍に軍を率いらせて反撃を命じます。

フリードリヒ大王は、雪解け後のオーストリア軍の行動開始を予測していましたが、ナイペルク軍は積雪の残る山地を越え、シュレージエンへの侵入に成功します。プロイセン軍は警戒が手薄であったため、オーストリア軍の動きを察知するのが遅れました。大王は各地に分散していた部隊を急遽集結させるとともに、ナイセとブリークの包囲部隊に撤退を命じ、本隊との合流を図ります。

4月5日、ナイペルク軍はナイセの救援に成功し、ブリークとの連絡を確立。さらに西進し、プロイセン軍と本国との連絡を遮断しようと試みます。プロイセン軍はオーストリア軍を追撃し、4月8日にはナイセ川西岸に到達。オーラウを救うべく、ナイペルク軍との会戦を決意します。

しかし、積雪と悪天候により両軍の動きは鈍く、互いの正確な位置を把握できない状況でした。4月9日、ナイペルク軍はブリーク南西のモルヴィッツ村に到着し、宿営。プロイセン軍の接近に気づかず、休息を取ろうとします。一方、プロイセン軍はモルヴィッツ南東のポガレル村に位置し、攻撃の機会を窺っていました。

戦闘の経過

4月10日、天候が回復した午前5時、プロイセン軍はモルヴィッツへ向けて進軍を開始。午前10時ごろ、プロイセン軍の前衛がオーストリア軍の哨戒騎兵と接触し、これを撃破します。モルヴィッツにオーストリア軍が宿営しているとの情報を得た大王は、会戦を決意します。一方、オーストリア軍はプロイセン軍の接近に慌てて部隊を展開しますが、準備不足は明らかでした。

プロイセン軍は二重戦列を形成し、モルヴィッツに向けて進撃。砲兵の射撃によりオーストリア軍に損害を与えます。大王は右翼、シュヴェリーン将軍は左翼を指揮。騎兵の弱点を補うため、擲弾兵大隊を騎兵軍団に編入するという、異例の配置を採用しました。

オーストリア軍の展開は遅れ、レーマー将軍率いる騎兵軍団はプロイセン軍の砲撃にさらされます。レーマーはプロイセン軍右翼の隙を見て突撃を敢行。シューレンブルク将軍率いるプロイセン軍騎兵は粉砕され、大王の目の前で王族が砲撃で命を落とすなど、プロイセン軍右翼は混乱に陥ります。シュヴェリーン将軍は、大王に戦場からの離脱を勧めます。

しかし、プロイセン軍歩兵はオーストリア軍騎兵の突撃をことごとく撃退し、損害を与えます。シュヴェリーンは右翼歩兵部隊に攻撃を命じ、プロイセン軍の火力によりオーストリア軍騎兵は潰走。ゲルデュ将軍率いるオーストリア軍歩兵もプロイセン軍の攻撃に耐えきれず、後退します。

プロイセン軍の進撃に驚愕したナイペルクは、残存兵力による攻撃を試みますが、プロイセン軍の砲撃と歩兵の規律正しい行進に圧倒され、兵士たちは戦意を喪失。午後7時半ごろ、ナイペルクは全軍に撤退を命じました。

戦いの結果と影響

モルヴィッツの戦いの後、ナイペルク軍はナイセまで撤退。一方、大王は敗走中に自軍の勝利を知ります。この戦いは、プロイセン軍と大王に多くの教訓をもたらしました。大王は以後、戦況が明らかになるまで戦場を離れないと決意し、軍の弱点であった騎兵の強化に努めました。

軍事的には辛勝であったものの、政治的には大きな成果を上げました。諸外国はプロイセンを列強と認め、フランスやバイエルンとの同盟が成立。プロイセンはシュレージエンを確保し、ヨーロッパにおける地位を確立しました。

モルヴィッツの戦いは、プロイセン軍の戦術、組織、訓練における革新を示すとともに、フリードリヒ大王の軍事的才能を世に知らしめる出来事となりました。この戦いの勝利は、プロイセンがその後のヨーロッパ政治において重要な役割を果たす上で、不可欠な要素となったのです。

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