モントリオール地下鉄

モントリオール地下鉄（仏: métro de Montréal、英: Montreal Metro）は、カナダのケベック州モントリオールを走る地下鉄で、1966年10月に開業しました。2024年現在、4路線、68駅で営業しており、総延長は60kmを超えています。パリ地下鉄の技術を導入し、750V直流電化、第三軌条方式、ゴムタイヤ式車輪を採用している点が特徴です。北米ではニューヨーク、メキシコシティに次ぐ利用者数を誇ります。

概要

モントリオール地下鉄は全線が地下に建設されており、セントローレンス川を越える区間も例外ではありません。路線の設計には工夫が凝らされており、駅への進入がスムーズになるよう、意図的に勾配が設けられています。具体的には、駅に向かって上り坂となるように設計されており、駅間は低くなっています。これは駅のホームからも見て取ることができます。

現在営業中の路線は4路線で、それぞれに番号とシンボルカラーが割り当てられています。3号線が欠番となっているのは、当初計画されていた鉄道路線が中止になったためです。その後、3号線の代替として、近郊鉄道路線のドゥ・モンターニュ線が整備されましたが、2024年には自動運転のライトメトロであるREMとして開業しました。

駅舎

モントリオールは冬になると最低気温が-30℃、最高気温でも-20℃になるほどの寒冷な気候です。そのため、全ての駅が地下に設置されており、外気が直接入らないように設計されています。全駅が地下駅という共通点があるものの、各駅舎のデザインは異なり、それぞれ別の建築家によって設計されています。ステンドグラス、彫刻、壁画など、芸術性を重視したデザインが取り入れられており、天井が高い駅が多く、太陽光が間接的に差し込むように広い空間が確保されている駅も多いです。ヴィクトリア広場駅の入口はパリ市から寄贈されたもので、パリ地下鉄を模したデザインとなっています。

駅構内や車内での大道芸は原則禁止されていますが、乗り換え駅の通路には大道芸人専用のスペースが設けられており、ハープの絵が目印となっています。ここではパフォーマンスが許可されています。

歴史

モントリオールでの地下鉄建設計画は1910年に遡りますが、実際の建設が始まったのは1962年5月でした。モントリオール万博の開催が決まり、それに合わせて地下鉄建設が急ピッチで進められました。当時、パリには既に地下鉄が走っており、パリの技術を導入した結果、モントリオール地下鉄はパリ地下鉄と似たスタイルとなりました。1966年10月には1号線と2号線が開業し、1967年4月にはモントリオール万博に合わせて4号線が開通しました。1986年6月には5号線が開通し、現在営業中の4路線が揃いました。その後、財政問題のため1990年代は路線の新設や延伸が行われませんでしたが、2002年に2号線の延伸工事が始まり、2007年4月に3駅が延伸開業しました。

路線と駅

グリーンライン（1号線）
開業当初から存在する路線で、モントリオール地下鉄で最も混雑する路線として知られています。フランス語ではリーニュ・ヴェルトゥと呼ばれています。

オレンジライン（2号線）
同じく開業当初から存在する路線で、総延長は約30kmと、モントリオール地下鉄で最も長い路線です。フランス語ではリーニュ・オランジュと呼ばれています。

イエローライン（4号線）
開業から約6ヶ月後に営業を開始した路線で、モントリオール地下鉄の路線の中で最も短い路線です。フランス語ではリーニュ・ジョーヌと呼ばれています。

ブルーライン（5号線）
モントリオール地下鉄の中で最も新しい路線で、1986年に開通しました。営業中の4路線の中で最も乗客数が少ないですが、アンジューまでの延伸計画が進行中です。2023年に建設が開始され、2030年に完成予定です。フランス語ではリーニュ・ブルーと呼ばれています。

延伸計画

ブルーラインのアンジュー延伸の他に、ピンクラインの計画もあります。過去には3号線（レッドライン）、6号線、7号線（ホワイトライン）の計画も存在しましたが、実現には至りませんでした。

車両

モントリオール地下鉄はゴムタイヤ式を採用しており、集電方式は第三軌条方式です。

現役車両の概要
モントリオール地下鉄の759型車両は、LAHT（高張力鋼）でできており、各車両は160人乗りです。各車両には2基の台車があり、各台車には4輪のゴムタイヤが取り付けられています。つまり、1両あたり8輪のゴムタイヤを使用しています。このタイヤは4基の直流モーターで駆動されます。電磁回生ブレーキも装備されており、10km/hまで減速した際に作動します。各路線にはシンボルカラーが設定されていますが、車両には反映されていません。車両の床は青を基調としたデザインです。

2016年には、36年ぶりとなる新型車両「Azur」が導入され、従来の車両が置き換えられました。2018年には、オレンジラインの全車両が新型車両に置き換えられました。

過去の車両
モントリオールのような寒冷地でゴムタイヤ式地下鉄を導入したのは当時としては前例がありませんでしたが、開業当初はパリ地下鉄で使用されていたMP 59が採用されました。

ゴムタイヤの使用について

ゴムタイヤによる走行は、鉄製車輪に比べて静粛性に優れており、振動を抑える効果があります。また、急勾配や急曲線にも対応できるという利点もあります。ゴムタイヤは最大で6.5%の勾配を登ることができ、鉄製車輪では難しい急勾配や駅間距離が短い路線に適しています。しかし、ゴムタイヤは鉄製車輪よりも寿命が短く、交換頻度が高くなります。また、転がり抵抗が大きいため、エネルギーロスも大きくなるという欠点もあります。

出典

Société de transport de Montréal (STM)（英語）
Montreal by Metro（英語）

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