モントリオール美術館

モントリオール美術館：カナダ最古の美術の殿堂

1860年、モントリオールの美術愛好家たちが中心となり設立されたモントリオール芸術組合は、当初は資金力とコレクションの不足から、展覧会や絵画教室といった小規模な活動しか行えませんでした。しかし、1877年、実業家ベナイア・ギブ氏からの多大な寄付により、状況は一変します。土地、資金、そしてヨーロッパ絵画のコレクションを提供されたことで、1879年、モントリオール美術館はついに開館を迎えました。

その後も、ジョン・W・テンペスト氏からの絵画コレクション寄贈や、アグネスとウィリアム・レールモント夫妻からのバルビゾン派やレンブラントの作品を含む大規模な寄贈など、多くの支援を受けながら美術館は成長を続けました。コレクションの増加に伴い、1912年には、エドワードとウィリアム・マックスウェル兄弟が設計した新しい建物に移転。一般公開を開始しました。しかし、この時期、重要なコレクターたちの相次ぐ逝去により、美術館所蔵作品の一部がオークションに出されるという事態も発生しました。

それでもなお、ドナルド・スターリング・パルマー氏一族からのコレクション寄贈や、アデリーン・ヴァン・ホーン氏からのエル・グレコやルノワールなどの巨匠の作品を含む寄贈など、美術館は多くの困難を乗り越え、コレクションを充実させていきました。1940年代からは、若手芸術家の作品も積極的に展示するようになり、装飾美術のコレクションも拡大。1959年には、3000点もの日本製香箱が寄贈されるなど、そのコレクションは多様性を増していきます。

しかし、1972年には、武装集団による大胆な窃盗事件が発生。ドラクロワやゲインズバラ、レンブラントなど、計50点近くの作品が奪われ、カナダ犯罪史上最大級の被害額となりました。これらの作品はいまだ行方不明です。この事件を受け、美術館は改修工事のため3年間閉館しましたが、1976年にはリニューアルオープンを果たしました。

1991年には、モシェ・サフディ設計による新館が旧館の向かいに完成。2000年には、リリアンとデヴィッド・スチュワート夫妻から1930年代以降の装飾美術品5000点、ミハエルとレナータ・ホーンステイン夫妻からフェルディナンド・ホドラーの素描300枚を含むコレクションなどが寄贈され、さらなる充実を遂げました。2010年には、シェルブルーク西通りにある歴史的建造物を改修したカナダ芸術のための別棟が完成しています。

現在、モントリオール美術館は、旧館と新館の2つの建物からなり、総延床面積は約48,528平方メートルを誇ります。これは、北アメリカ大陸でも18番目の広さを誇る規模です。版画、デッサン、絵画、彫刻、写真、家具など、3万点以上の作品を収蔵し、ハンス・メムリンク、エル・グレコ、レンブラント、セザンヌ、ピカソなど、世界的に有名な巨匠たちの作品を数多く所蔵しています。

モントリオール美術館は、カナダ最古の美術館として、その歴史とコレクションの豊かさ、そして広大な展示空間は、カナダのみならず、世界中の美術愛好家たちを魅了し続けています。 今後も、新たなコレクションの収集と、その保存・公開を通じて、美術文化の発展に貢献していくことでしょう。

もう一度検索