モンマルトル

モンマルトルの概要

モンマルトル（Montmartre）は、フランスの首都パリにある丘の一つであり、パリで最も高い地点（約130メートル）です。この地域は、もともと独自のコミューンとして存在していたが、1860年に一部がパリに編入され、今ではパリ18区の一部を形成しています。モンマルトルは、サクレ・クール寺院やムーラン・ルージュ、テルトル広場といった観光名所が多数存在し、多くの旅行者を惹きつけています。

初期の歴史

モンマルトルはかつてパリ近郊の独立した村であり、その名は「殉教者の丘」を意味するMont des Martyrsに由来します。紀元272年頃、この丘の近くでフランスの守護聖人、サン・ドニが殉教した事件があり、その神話が丘の名前の背後にあると伝えられています。1534年には、イグナチオ・デ・ロヨラが丘の聖堂で誓いを立て、イエズス会の創設につながりました。また、フランス革命期には一時「モンマラー」と改称されましたが、後に元の名前に戻されています。長い間、丘は農地や風車が広がり、独特の田園風景を有していました。

19世紀の変化

1840年から1845年にかけてティエールの城壁が築かれたことにより、地域の構造が変わりましたが、19世紀半ばには都市化が進行しました。ナポレオン3世の下で行われたパリの大改造によって、多くの市民が中心部から移動し、その一部がモンマルトルに流入しました。そして、1860年にはモンマルトルの一部がパリに組み込まれました。

19世紀末から20世紀初頭には、モンマルトルは歓楽街として発展し、ムーラン・ルージュやル・シャ・ノワールなどのキャバレーが立ち並びました。これは、長年にわたり修道女たちがワインを製造していた地域であったため、飲食店が増える土壌が生まれた結果です。また、サクレ・クール寺院が1876年から1912年にかけて建設され、その美しいドームはパリのシンボルとなりました。

芸術の街

モンマルトルは19世紀半ばから、アーティストたちの聖地となりました。特に、当時の芸術家たちは比較的安価な住居やアトリエを求め、モンマルトルに移り住みました。パブロ・ピカソやアメデオ・モディリアーニなど、多くの著名な芸術家がこの地をアトリエに選び、創作活動を行いました。特にピカソの『アビニヨンの娘たち』がここで創られたことで、モンマルトルはキュビズムの誕生地としても知られています。

また、モンマルトルには、ファン・ゴッホ、ルノワール、ドガ、トゥールーズ＝ロートレックといった多くの著名アーティストが住んでいました。彼らは、この魅力的な風景を描写し、多様なスタイルで作品を制作しました。

現在のモンマルトル

現在のモンマルトルは観光名所としての地位を確立し、多くの訪問者に愛されています。テルトル広場やサクレ・クール寺院、ムーラン・ルージュなど、観光名所は日々賑わいを見せており、映画『アメリ』の公開以降、さらに観光スポットとしての注目度が増しています。また、モンマルトル墓地には多くのアーティストたちが眠っており、歴史的な意義を持つ場所でもあります。

この地域は現在、歴史的景観を保持するために開発が厳しく制限されていますが、新旧の文化が共存する魅力ある場所として、多くの人々を惹きつけ続けています。モンマルトルは今も昔も、芸術と歴史が交差する特別な存在であり続けています。

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