モード・ジャズ

モード・ジャズ（モーダル・ジャズ）

モード・ジャズ、またはモーダル・ジャズは、従来のコード進行中心のジャズとは異なり、モード（旋法）を基盤として演奏されるジャズのスタイルです。モダン・ジャズの一つのサブジャンルとして位置づけられています。英語では「Modal Jazz」と呼ばれます。

歴史

モード・ジャズの萌芽は1950年代後半に見られ、1959年にリリースされたマイルス・デイヴィスの画期的なアルバム『カインド・オブ・ブルー』によってそのスタイルが確立されました。

ビバップからの脱却

ビバップに代表される従来のモダン・ジャズでは、コード進行やコードの分解に基づくアドリブ・ソロが主流でした。ハード・バップに至ると、メロディは洗練されたものの、コードに基づいて音階が制限され、自由な演奏が難しくなるという状況が生じました。これは、コード進行だけでなく、メロディ自体にも進行感を求めようとしたことが原因です。

そこで、コード進行に頼らず、モードに基づいた旋律による進行を取り入れるという新たなアプローチが生まれました。これがモード・ジャズです（ハード・バップからの発展という見方もあります）。和声の面では多少の困難が生じましたが、ソロ・プレイにおいては自由度が飛躍的に向上し、メロディの選択肢が広がりました。

モード・ジャズの特性

モード・ジャズの欠点としては、コード進行による推進力や、メロディによる劇的な展開が少ない点が挙げられます。しかし、その分、演奏者はより自由な発想で、空間的な広がりや独特の雰囲気を表現することができます。

機能和声理論における和音構成音と非和声音の区別といった概念は、モード・ジャズでは薄れます。すべての音が等価に扱われるため、旋律は予測不可能な動きを見せ、独自の個性を確立するための手段として機能します。リディアン・クロマティック・コンセプトがその理論的な基盤となっています。

例えば、本来EやCに解決されるべきD音が、A音へ跳躍するといった、従来の和声法では考えられないような展開も可能になります。モード・ジャズでは、特に初期のスタイルとの差別化を図るため、和音構成音に解決するような動きは意識的に避けられる傾向があります。

ベースを含むすべてのパートにおいて、このような自由な音の扱いが可能になるため、従来ドミナント・ペダルとしてのみ現れていた第二転回形を、機能和声的な脈絡なしに用いることもできます。

マイルス・デイヴィスの功績

マイルス・デイヴィスは、モード・ジャズの可能性を追求し、最も成功したアーティストの一人です。アルバム『カインド・オブ・ブルー』は、モード・ジャズの代表作として、今も多くの人々に影響を与え続けています。

同アルバムのセッションに参加したジョン・コルトレーンは、1960年代を通してモーダルな即興演奏を深く探求し、独自のスタイルを確立しました。

主なミュージシャン

マイルス・デイビス
ビル・エバンス
ギル・エバンス
フィル・ウッズ
* スコット・ラファロ

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