モーリス (自動車)

モーリス：英国自動車史に名を刻んだメーカーの興亡

モーリスは、かつてイギリスで栄えた自動車メーカーです。1913年の創業から、数々のモデルを生み出し、英国自動車業界に大きな足跡を残しました。しかし、時代の流れとともに、合併や買収を繰り返し、最終的にはブランドとして消滅することとなります。この記事では、モーリスの歴史を詳細にたどり、その栄光と衰退の物語を紐解きます。

自転車メーカーからの出発と黎明期

モーリスの始まりは、1910年、ウィリアム・モーリスが設立した自転車製造会社でした。当時、英国では自転車ブームが到来しており、ウィリアム・モーリスは、この好況の中、自動車製造への関心を高めていきます。そして1913年、オックスフォードのカウリーに自動車製造工場を建設、本格的な自動車生産を開始しました。

最初のモデルは「ブルノーズ・オックスフォード」という2人乗り自動車でした。初期は、多くの部品を外部から調達し、工場では組み立てに専念していました。その後、クーペやバンを追加ラインナップに加えましたが、搭載エンジンが小さいため、4人乗りモデルの開発には苦労しました。より大型のエンジンを求め、モーリスはアメリカまで足を運び、最終的に1548ccのエンジンを調達。改良を重ね、1915年にはより大型の2人乗りと4人乗りモデル「モーリス・カウレー」を発売し、順調に販売数を伸ばしていきます。

第一次世界大戦勃発後も、需要は安定しており、モーリスは成長を続けました。当時、高品質な車を低価格で提供する会社として高い評価を得ていたモーリスは、市場シェアを拡大し、1924年にはイギリス・フォードを抜き、国内シェアトップに躍り出ました。さらに、サプライヤーの買収も戦略的に行い、生産体制の強化を図っていきました。

小型車市場への参入と成長

1928年には、小型車「モーリス・マイナー」を発売し、小型車市場にも参入しました。これは、大恐慌時代を乗り越えるための重要な戦略となります。その後も、改良を重ねた後継モデル「モーリス・エイト」や他の車種を次々と発表し、市場での存在感を高めていきました。この頃、モーリス社は経営陣の変更や社内改革など、幾多の困難に直面しましたが、それを乗り越え、成長を続けました。1938年には、ナッフィールド子爵となり、MGやライレーといった他社を買収、ナッフィールド・オーガニゼーションを形成するまでに成長しました。

戦後と合併、ブランドの消滅

第二次世界大戦後、モーリスは戦前モデルの生産を再開し、1948年には、後にモーリスを代表するモデルとなる「モーリス・マイナー」を発売しました。このモデルは、アレック・イシゴニスが設計したもので、その後のミニ開発にも繋がる重要なモデルとなりました。

1951年、モーリスは長年のライバルであったオースチンと合併し、「ブリティッシュ・モーター・コーポレーション（BMC）」を設立します。しかし、この合併はモーリスにとって大きな転換点となりました。BMCでは、オースチンが優勢となり、バッジエンジニアリングが中心となりました。これは、様々なブランドで同じような車種が販売されることを意味し、モーリスブランドの独自性が薄れていきました。

1968年には、BMCはさらにブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーションに吸収合併され、モーリスブランドは、徐々にその存在感を失っていきます。1980年代初頭には、「モーリス・マリーナ」や「モーリス・イタル」といったモデルが発売されましたが、1984年に「モーリス・イタル」の生産終了をもって、乗用車生産は終了しました。その後もバンなどの製造は続けられましたが、1980年代はじめにオックスフォードのカウリーにあったモーリス工場は、他のブランドとの共同生産工場となりました。

そして現在へ

2005年には、ブリティッシュ・レイランドの後継会社であったMGローバーが経営破綻。中国の南京汽車がその資産の大部分を買い取った結果、モーリスの商標権も南京汽車が所有することとなりました。現在、モーリスブランドは、自動車生産からは離れていますが、その歴史は、英国自動車業界の歴史において重要な一ページとして残されています。

モーリスの主要車種

モーリスは、その歴史の中で数多くのモデルを世に送り出しました。「モーリス・オックスフォード」「モーリス・カウレー」「モーリス・マイナー」「モーリス・エイト」「モーリス・マリーナ」などは、代表的なモデルとして挙げられます。これらのモデルは、それぞれの時代に合ったデザインや技術を取り入れながら、人々に愛され、英国の道路を走りました。

もう一度検索