ヤグルマギク

ヤグルマギク（矢車菊）

ヤグルマギク（学名: Centaurea cyanus）は、キク科ヤグルマギク属の一年草です。英名では「コーンフラワー」として知られ、その美しい姿と多様な用途で古くから人々に愛されてきました。

特徴

外観: 草丈は20cmから100cm程度で、全体が白い毛で覆われています。夏には、名前の由来である矢車のような形の花を咲かせます。野生種は美しい青紫色ですが、園芸品種改良により、紫、白、桃色など様々な花色があります。
原産地: ヨーロッパ原産で、元々は麦畑などに生える雑草でした。しかし、その美しさから園芸用に改良され、世界中で栽培されるようになりました。
国花: ドイツ、エストニア、マルタ、フランスでは国花として扱われています。
耐寒性: 耐寒性があり、一年草ですが、ヤグルマギク属には多年草の品種も存在します。
種子: 種子は痩果で、短い毛が付いています。
帰化植物: 日本には明治時代に導入され、現在では帰化植物として野外でも見られます。麦畑に侵入すると、収量を大幅に減らす強害雑草としての一面も持ち合わせています。

利用

観賞用: 花壇や切り花として広く利用されています。
食用: 食用として栽培された品種もあり、エディブルフラワーとして料理を彩ります。
薬用: 古くから薬草としても利用されてきました。
染料: 花から染料を採取し、布などを染めるのに使われていました。

栽培

種まき: 東北地方以北や寒冷地では春に、関東以西の平地では秋に種をまきます。9月から10月が適期で、直まきまたは育苗箱に種をまきます。発芽には土壌の適度な湿り気が必要で、発芽まで約1週間かかります。
開花時期: 4月から7月頃まで開花を楽しめます。寒咲き品種は、8月末に種をまき、日当たりの良い場所で育てると、年内に開花することもあります。
病害虫: 比較的病害虫に強く、丈夫な草花ですが、立枯病やアブラムシには注意が必要です。

文化

コーンフラワーブルー: ヤグルマギクの青色は、最高級サファイアの色味を表現する際に「コーンフラワーブルー」として引き合いに出されます。
歴史: ツタンカーメン王の棺にヤグルマギクの花輪が供えられていたり、マリー・アントワネットが愛した花としても知られています。洋食器の「小花散らし」模様は、彼女がデザインしたヤグルマギクの柄に由来すると言われています。

学名の由来

Centaurea: ギリシャ神話に登場する半人半馬のケンタウロスに由来します。ケンタウロスが毒矢で傷を負った際、ヤグルマギクの花びらで治療したという伝説があります。
* cyanus: ローマ神話の花の女神フローラの崇拝者であった青年チアヌスが由来です。彼の死を悼んだ女神が、彼が集めていた花に「チアヌス」の名を与えたとされています。また、cyanusはギリシャ語で「濃い青色」を意味します。

ヤグルマギクは、その美しい花姿だけでなく、歴史や文化とも深く結びついた魅力的な植物です。庭に植えて観賞するだけでなく、その背景にある物語に触れてみるのも面白いでしょう。

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