ヤチバエ

ヤチバエとは

ヤチバエは、ハエ目（双翅目）ヤチバエ科（Sciomyzidae）に属する昆虫の総称です。世界中で58属512種が確認されており、多様な種が存在します。

分布

ヤチバエ科の種は、南極大陸を除く全ての地域に分布しています。特にヤチバエ亜科の種が広く分布しており、他の2つの亜科（Huttonininae亜科、Salticellinae亜科）は、それぞれニュージーランド、ヨーロッパと北アフリカに限定されています。

形態

成虫の体長は2mmから11mm程度で、体色は黄褐色から暗灰色まで様々です。ヤチバエ科は、以下の点で他のハエの仲間と区別できます。

触角にある鬚剛毛と下額眼縁剛毛を欠く
脛節の先端部に1-2対の剛毛を持つ
単眼剛毛は1-2対
後単眼剛毛は交差しない
頭楯が口縁よりも前に突出しない

卵は白色で長楕円形をしており、幼虫は3mmから20mm程度まで成長します。

生態

ヤチバエの幼虫は、陸生または淡水生の貝類に寄生するという特徴的な生態を持っています。寄生するだけでなく、貝類を捕食する種もいます。陸生貝類に寄生する種の場合、成虫は貝殻に産卵します。幼虫は湿地や湖沼の水辺、落ち葉の下などで蛹になります。幼生期の天敵としては、ヒメバチやコマユバチなどの寄生蜂が知られています。

成虫は、河川や湖沼、水田などの水辺に近い草地などでよく見られます。動物の死骸や糞などを餌とします。

分類

ヤチバエ科は、ハマベバエ科、ベッコウバエ科、ツヤホソバエ科などと共にヤチバエ上科を構成しています。ヤチバエ科は、以下の3つの亜科に分類されます。

ヤチバエ亜科 (Sciomyzinae)
Huttonininae亜科
Salticellinae亜科

かつてはHuttonininae亜科を独立した科（Huttoninidae科）とする説や、Tetanoceridae科を独立させるという見解もありましたが、現在ではこれらはヤチバエ科に含まれることが一般的です。また、近縁のヤスデヤドリバエ科（Phaeomyiidae）をヤチバエ科の亜科として扱う場合もあります。

ヤチバエ科には、現生種だけで58属512種が記録されており、日本には11属23種が生息しています。日本に生息する種は全てヤチバエ亜科に属します。

下位分類

Huttonininae 亜科 - 2属9種。
Salticellinae 亜科 - 2属3種（化石種を含む）。
ヤチバエ亜科 Sciomyzinae - 60属500種（化石種を含む）。
ヤチバエ族 Sciomyzini
キタヤチバエ族 Tetanocerini

脚注

参考文献

末吉昌宏（2005）「ヤチバエ科」 In: 川合禎次、谷田一三（共編）『日本産水生昆虫―科・属・種への検索』（2005年、東海大学出版会）

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