ヤヌス・シドウォ

ヤヌス・シドウォ（Janusz Sidło, 1933年6月19日 - 1993年8月2日）は、ポーランドの陸上競技選手で、やり投のスペシャリストとして知られています。1956年のメルボルンオリンピックでは銀メダルを獲得し、その名声を確立しました。

陸上競技との出会い

シドウォがやり投に興味を持ったのは1948年、ソ連の女子選手アレクサンドラ・チュジナが44mを投げたという記録を聞いたことがきっかけでした。当時15歳だったシドウォは、男子用規格のやりでもその記録を超えられると考え挑戦したところ、約46mを投げることができ、その才能を開花させました。

オリンピックへの挑戦

1952年のヘルシンキオリンピックがシドウォにとって最初のオリンピック出場となりましたが、結果は62m16で予選敗退に終わりました。しかし、翌年、彼は目覚ましい成長を遂げます。1953年10月、ポーランドと東ドイツの対抗戦で、シドウォは77m52のビッグスローを記録しました。さらに、カメラマンのリクエストに応えて行った追加の投てきでは、80m41という驚異的な記録を出し、当時の世界記録にわずか26cmと迫りました。その勢いのまま、1954年のベルンで開催されたヨーロッパ選手権では見事優勝を果たしました。

世界記録とメルボルンオリンピック

1956年6月、シドウォは83m66の世界新記録を達成し、メルボルンオリンピックの金メダル候補として注目を集めました。オリンピック決勝では79m98を記録しましたが、ノルウェーのエギル・ダニエルセンが85m71の世界新記録を樹立し、シドウォは銀メダルに終わりました。ダニエルセンの2番目の記録は72m60であり、シドウォは不運なラッキースローに敗れたと感じていました。しかし、1958年のヨーロッパ選手権では、ダニエルセンを抑えて優勝し、メルボルンの雪辱を果たしました。

ローマ、そして東京、メキシコシティオリンピック

1960年のローマオリンピックでは、予選で85m14を記録し、金メダルへの期待が高まりましたが、決勝では他の選手が投げたやりが顔に突き刺さりそうになるというアクシデントが発生し、精神的なショックから8位に終わりました。その後、1964年の東京オリンピック、1968年のメキシコシティオリンピックにも出場しましたが、メダルには届きませんでした。

引退後

シドウォは1973年まで競技を続け、現役時代には世界記録を1度、ポーランド記録を7度樹立しました。ポーランド選手権では14回優勝し、80mを超える投てきは150回に達しました。引退後はコーチとして後進の指導にあたりましたが、心臓の病気と肺に水がたまる病気に苦しみ、1993年にこの世を去りました。

ヤヌス・シドウォは、その輝かしい実績と不屈の精神で、ポーランド陸上競技界に大きな足跡を残しました。

もう一度検索