ヤマハ・サリアン

ヤマハ・サリアン：軽快な走りと洗練されたデザインが魅力のスクーター

ヤマハ発動機が1982年1月に発売した「サリアン」は、同社が送り出した本格スクーターとして人気を博しました。当時、スクーター市場は活況を呈しており、その中でサリアンは、女性を主なターゲットに据え、スタイリッシュなデザインと扱いやすさを両立した一台として注目を集めました。愛称にもなったSalient（セイリアント）は英語で「顕著な」「目立つ」を意味し、市場におけるリーディングモデルを目指すというヤマハの意気込みが込められています。

小型軽量ボディと快適な走行性

サリアンは、ヤマハのそれまでのスクーター「パッソーラ」より一回り大きく、「ベルーガ」よりも一回り小さい車体サイズに設計されました。前後10インチのタイヤと、乗り心地に配慮したボトムリンク方式フロントサスペンションを採用することで、軽快な走りと快適な乗り心地を実現しました。車両重量は乾燥状態で55kg（デラックス）と軽量で、取り扱いも容易でした。

充実の装備とパワフルなエンジン

全グレードにセルスターターを標準装備し、始動性を向上。エンジンは空冷2サイクル単気筒で、最高出力3.6psを発揮しました。駆動方式は、従来のパッソル系とは異なり、Vベルトによるオートマチックを採用。スムーズな加速と変速を実現しています。グレードは「デラックス」と「スーパーデラックス」の2種類が用意され、それぞれに魅力的な装備が備わっていました。

多彩なバリエーションと進化

発売後、サリアンは更なる進化を遂げます。1982年5月には、スーパーデラックスをベースにした特別仕様車「サリアンスペシャル」が登場。木目調の外装パーツやクロームメッキホイール、フロントキャリアなどが装備され、より洗練されたスタイルを手に入れました。

1984年1月には、改良版である「ニューサリアン」が発売されました。レッグシールドとフロントフェンダーを一体化し、ヘッドライトをハロゲンに変更。さらに、プロテクトモールで車体を保護することで、デザイン性と実用性を高めました。エンジンは7ポートトルクインダクションエンジンに変更され、最高出力が5.0psに向上。性能も向上したニューサリアンは、更なる人気を獲得しました。

デザイン性と機能性の融合

サリアンは、そのスタイリッシュなデザイン性だけでなく、実用的な機能も充実していました。フロントトランクやメーターバイザー、フェンダーモールなど、使いやすさを考慮した装備が多数採用されています。また、ワン・ツースタートシステムやハンドルロック、メットホルダー、リアキャリアなども装備されており、利便性にも配慮した設計となっています。

受賞歴

サリアンの高いデザイン性と機能性は高く評価され、1982年度のグッドデザイン賞商品デザイン部門において、「サリアン・スーパーデラックス」が受賞しました。これは、サリアンのデザインと機能性が広く認められた証と言えます。

時代のニーズに応えた名車

ヤマハ・サリアンは、1980年代のスクーター市場において、女性ユーザーを中心に大きな人気を博しました。その軽快な走りと、洗練されたデザイン、そして充実した機能は、多くのユーザーを魅了し、ヤマハのスクーター史に輝く名車として記憶されています。現在では生産を終了していますが、そのデザインや機能性は、後のスクーターデザインにも影響を与えたと言えるでしょう。当時を知る人々にとって、サリアンは青春時代の思い出と共に鮮やかに蘇る一台と言えるのではないでしょうか。

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