ヤマハ・タウニィ

ヤマハ・タウニィ(TOWNY) ― 80年代を彩った、大人のためのソフトバイク

1980年代、日本のバイク業界は活況を呈していました。特に女性をターゲットにした、軽くて扱いやすい「ソフトバイク」が人気を集めていました。ヤマハ発動機のパッソルやパッソーラなどがその代表格です。しかし、ヤマハは新たなターゲット層に着目しました。それは、30代を中心とした男性です。

既存のソフトバイクとは一線を画す、男性向けの新たなモデル。それが、1980年3月に誕生したタウニィ(TOWNY)です。正式型番はMJ50。キャッチコピーは「男のソフトバイク」。その言葉が示す通り、タウニィは従来のソフトバイクとは異なる、洗練されたデザインと力強さを兼ね備えていました。

タウニィの開発にあたっては、既に人気を博していたキャロット(MA50)がベースとなりました。しかし、単なる改良モデルではありません。男性のニーズを捉えた、再設計・再開発が施されています。スタイリッシュなボディライン、力強い走りを可能にするエンジン、そして、当時としては斬新なデザインが、多くの男性の心を掴みました。

搭載エンジンは、2ストローク単気筒49cc。最高出力は2.8psと、決して大出力ではありませんが、軽快な走りを可能にしていました。トランスミッションは2速オートマチック。さらに、シャフトドライブを採用することで、メンテナンスの容易性とスムーズな走行を実現しました。タイヤサイズは前輪16インチ、後輪14インチと、前後で異なるサイズを採用。これは、当時のバイクとしては珍しい仕様でした。

そして、タウニィを語る上で欠かせないのが、そのCMです。CMキャラクターには、人気サックス奏者の渡辺貞夫氏を起用。落ち着いた雰囲気のCMは、ターゲット層である30代男性の心を掴み、大きな話題となりました。「いいなあ、これ」「いいでしょう、これ」「いいなあ、あれ」というキャッチコピーも、広く知られるようになりました。

発売当時の価格は89,800円。これは、当時の経済状況を考えると、決して安くはない価格でした。しかし、タウニィのスタイリッシュなデザイン、力強い走り、そしてCMによる高い認知度など、多くの魅力が相まって、高い人気を獲得しました。

タウニィは、単なる交通手段としてではなく、個性を表現するツールとして、多くの男性に受け入れられました。80年代のバイクブームの中で、ひとつのアイコンとして輝きを放ち、多くのライダーに記憶される一台となったのです。その後のバイク業界にも大きな影響を与え、多くの後継モデルの礎となりました。

タウニィは、ヤマハ発動機の技術力と、時代のニーズを的確に捉えたマーケティング戦略の成功例と言えるでしょう。その存在は、日本のバイク史において、重要な一ページを刻んでいます。現在では生産終了していますが、当時のバイクブームを象徴するモデルとして、多くの愛好家から高い人気を誇っています。 タウニィは、単なるオートバイではなく、一つの時代を代表する文化的アイコンとして、これからも語り継がれていくことでしょう。

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