ヤマハ・メイト

ヤマハ・メイトシリーズ：ビジネスバイクの40年史

ヤマハ発動機が1965年から2008年まで生産したビジネス用オートバイ「メイト」シリーズは、日本のモペットブーム、そしてビジネスバイクの歴史において重要な位置を占めます。本稿では、メイトシリーズの起源から生産終了、そしてその後の展開までを多角的に解説します。

モペットMF型：黎明期と試練

メイトシリーズのルーツは、1960年に発売されたヤマハ初の50ccモペット、モペットMF-1に遡ります。当時、スズキのスズモペットやホンダのスーパーカブが市場を席巻する中、ヤマハはデザイン性を重視した斬新なモノコックフレームのMF-1を発表。しかし、先進的な設計ゆえの整備性の悪さや信頼性の問題からクレームが殺到し、ヤマハは深刻な経営危機に陥りました。 その後、改良型のMF-2が発売され、信頼性向上に努めました。

メイトU/V系：オートルーブと進化

1965年、ヤマハはモペットMF-2をベースにメイトUシリーズを発売。大きな特徴は、世界初の2ストロークエンジン用自動分離給油装置「オートルーブ」の搭載です。これは2ストロークエンジンのオイル混合給油という煩わしさを解消し、大きな話題となりました。Uシリーズは、使い勝手の良いデザインと高い実用性で人気を博しました。

続く1971年には、Uシリーズを全面改良したVシリーズが登場。吸気方式の変更やデザインの近代化、そして5段階調整式リアサスペンションなどの改良が施されました。Vシリーズは、セルモーター搭載モデルやオートマチックモデルなどもラインナップに加わり、顧客の多様なニーズに応えました。さらに、新聞配達仕様の「ニュースメイト」も登場し、業務用バイクとしての地位も確立しました。V50シリーズは2008年の生産終了まで、その人気を保ち続けました。

Tメイトシリーズ：4ストロークへの転換

1982年には、4ストロークエンジンを搭載したTメイトシリーズが発売されました。静粛性、耐久性、燃費の向上を追求したこのシリーズは、SOHC4ストロークエンジンとシャフトドライブを採用。環境意識の高まりに対応した省燃費設計も大きな特徴でした。T50、T80、そして郵政仕様車として開発されたT90など、様々なモデルが展開され、T90は新聞配達用として一般販売された「ニュースメイトT90N」としても人気を博しました。4ストロークエンジン搭載車ながら、T90は最終モデルまで生産が続けられました。

生産終了とその後

ビジネス用バイクの需要減少や排出ガス規制の強化を背景に、2008年9月、メイトシリーズは全車種生産終了となりました。ヤマハは、すでに生産していたビジネス用スクーター「ギア」シリーズにその役割を一本化しました。しかし、「メイト」の名称は、除雪機や船外機などのブランド名としても継続して使用されています。また、東南アジア諸国では、メイトの技術を継承したモデルが現在も生産されています。

メイトシリーズの技術的貢献

メイトシリーズは、オートルーブシステム、CDI点火方式など、数々の革新的な技術を搭載しました。これらの技術は、後のオートバイ開発にも大きな影響を与えたと言えるでしょう。また、使いやすさを追求したデザインや、郵政業務や新聞配達など、多様な用途への対応は、日本のビジネスバイクの発展に大きく貢献しました。

まとめ

40年以上にわたって愛され続けたヤマハ・メイトシリーズ。その歴史は、日本のモペットブームからビジネスバイクの進化、そして環境規制への対応までを映し出す、貴重な記録となっています。生産終了後もその名は生き続け、日本のオートバイ史に燦然と輝く一ページを刻んでいます。 メイトシリーズの功績は、単なるビジネスバイクの枠を超え、日本のオートバイ産業全体に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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