ヤマハ・TMAX

ヤマハTMAX：オートマチックスポーツコミューターの進化

ヤマハ発動機が製造するTMAXは、大型スクーターという枠を超えた、独自の進化を遂げてきたオートバイです。一般的なスクーターとは異なる、スポーティな走りと快適性を両立させたその魅力に迫ります。

開発コンセプト：スクーターの常識を覆す

TMAXの開発は、マジェスティの海外での人気を背景に、より大排気量で高速走行や長距離走行に適したスクーターを目指してスタートしました。単なる排気量アップではなく、快適な日常使いとスポーティな走行性能の両立が追求されました。その結果生まれたのは、「オートマチックスポーツコミューター」という新しいカテゴリーのオートバイです。50:50に近い理想的な前後重量配分、他社スクーターを凌駕する50度のバンク角など、運動性能は従来のビッグスクーターの概念を大きく変えました。この革新的なコンセプトとスタイリングは、2001年度グッドデザイン賞金賞を受賞する評価を得ています。

メカニズム：オンロードスポーツタイプ並みの走行性能

TMAXの技術的な特徴は、数々の革新的機構にあります。エンジンは専用設計の499cc水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒。鍛造ピストンとメッキシリンダー、ロングストローク型を採用し、低重心化と前輪への加重を高めるため、シリンダーはほぼ水平に配置されています。さらに、クランクシャフトを挟んで逆向きに配置された水平対向ピストン式のバランサーが、振動を低減しています。

一般的なスクーターで採用されるユニットスイング式サスペンションとは異なり、TMAXはエンジンをダイアモンドフレームにリジッドマウントし、独立したスイングアーム式リヤサスペンションを採用。これによりバネ下重量を削減し、高速走行時の安定性を向上させています。駆動方式は、小型の専用設計ゴムベルト式無段変速機とサイレントチェーンを組み合わせることで、スムーズな動力伝達を実現しています。

フロントサスペンションは、トップブリッジとアンダーステムの両方で支持する、剛性の高い正立式テレスコピックフォークを採用。リヤサスペンションは、伸び作動式のモノショックがエンジン下部に配置されています。これらの機構により、スクーターとは思えない高い操縦安定性と剛性感を実現しました。

日本仕様車には、騒音規制への対応として排気系の変更や、駆動系のセッティング変更などが施されており、最高出力は輸出仕様車より若干低くなっていました。しかし、ワイズギア社から発売されたアクセレーションキットにより、性能を向上させることが可能です。

モデルバリエーション：進化を続けるTMAX

SJ02J (初代)：

初代TMAXは、2000年秋にヨーロッパで発売され、2001年8月に日本国内で発売されました。キャブレター式エンジンを搭載し、軽快な走りを実現。鉄鋼製ダイアモンドフレームと、前後14インチホイールを採用していました。メーターは回転計が省略され、シンプルな構成でした。

SJ04J (2代目)：

2004年に登場した2代目は、吸気方式がインジェクション化され、エンジン性能が向上。フロントブレーキがダブルディスク化され、リヤホイールが15インチに大型化されるなど、更なる走行性能の向上が図られました。メーターは回転計が追加され、情報量が増加しています。

SJ08J (3代目)：

2007年発売の3代目は、ダイカストアルミ合金製フレームの採用により軽量化を実現。前後15インチホイール、43mm径フロントフォーク、対向4ポットブレーキキャリパーの採用など、スポーティな走りを追求したモデルです。メーターデザインも変更されています。

SJ12J (4代目)：

2012年には、排気量が530ccに拡大された4代目TMAXが登場。ボア・ストロークの変更や吸気バルブ径の拡大により、力強いエンジン性能を獲得しました。車体デザインも一新され、ABS仕様も設定されました。

SJ15J (5代目)：

2017年発売の5代目モデルでは、フレームやリアアームの刷新、リアホイールのサイズダウンなどにより軽量化を実現。電子制御スロットル（YCC-T）、トラクションコントロールシステム（TCS）、D-MODEなど、先進的な電子制御システムが搭載されました。上級グレードにはクルーズコントロール、ヒーター、電動スクリーンなども装備されています。

まとめ

TMAXは、スクーターの枠を超えた、独自の進化を続けるオートバイです。常に最新の技術が投入され、その性能は進化を続けています。スポーティな走り、快適な装備、そしてスタイリッシュなデザインを兼ね備えたTMAXは、多くのライダーを魅了し続けています。

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