ヤマハ・TRX850

ヤマハTRX850：スポーティな走りと個性的なデザインが融合した名車

1995年から1999年にかけて、ヤマハ発動機から発売されたTRX850は、独特のスタイリングと優れた走行性能で多くのライダーを魅了したオートバイです。本記事では、TRX850の技術的な特徴やデザイン、そしてその歴史的背景について詳しく解説します。

デザインとカラーバリエーション

TRX850の最大の特徴は、ハーフカウルと、軽量かつ高剛性な鋼管トラスフレームでしょう。この組み合わせにより、スポーティな外観と優れたハンドリングを実現しています。

カラーリングも魅力の一つです。発売期間中に複数のカラーリングが用意され、タンク、フェンダー、テールカウル、フレーム、ホイール、エンジンの各パーツの色が組み合わされて、個性的なデザインを生み出していました。

例えば、1995年モデルには「ヒートレッド」（外装：赤、フレーム：白、ホイール：白、エンジン：黒）や「ブルーイッシュホワイトカクテル」（外装：白、フレーム：赤、ホイール：黒、エンジン：黒）がラインナップされました。1998年以降は「ブラック2」や「パープリッシュブルーメタリック」といったカラーも登場し、選択肢が広がっていきました。さらに、一部期間ではカラーオーダーも可能で、オレンジやガンメタリックといったカラーも選択できたようです。輸出仕様には濃紺のモデルもあったと伝えられています。

エンジンと走行性能

TRX850には、水冷並列2気筒DOHC5バルブエンジンが搭載されています。これは、TDM850に搭載されていたエンジンをベースとしていますが、クランクシャフトの角度がTDM850の360度から270度に変更されています。この変更により、トラクション性能が向上し、より力強い走りを実現しています。

エンジンのシリンダーは、TDM850のオープンデッキ型からクローズドデッキ型に変更されており、放熱性と剛性の向上に寄与しています。オイルタンクもエンジン背面に配置することで、重量バランスの最適化が図られています。アルミ製のオイルタンクは放熱性にも優れており、エンジン全体の効率を向上させています。

フレームと車体構成

鋼管トラスフレームは、TRX850の軽量化と高剛性化に大きく貢献しています。このフレームは、スポーツライディングにおいてライダーに車体の挙動を正確に伝え、高い操縦性を発揮するために設計されています。また、スリムな車体を実現するためにも、このフレーム構造が不可欠でした。

レースシーンでの活躍とその後

発売当初、TRX850は優れた操縦性と豊富なレースキットパーツの供給により、MTレースなどで高い人気を博しました。しかし、他社から大排気量・高出力のV型2気筒エンジン搭載モデルが発売されると、TRX850は次第にサーキットから姿を消していきました。現在では、直接の後継モデルは存在していません。

まとめ

ヤマハTRX850は、個性的なデザインと高い走行性能を両立した、魅力的なオートバイでした。そのスタイリング、エンジン、そしてフレーム構造は、多くのライダーに鮮烈な印象を与え、今もなお語り継がれる名車と言えるでしょう。独特の270度クランクによるエンジンフィーリングや、鋼管トラスフレームによる軽快なハンドリングは、多くのライダーに忘れがたい走りを提供したに違いありません。現在では生産終了していますが、中古市場でも根強い人気を誇っています。

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