ヤマハ・TZM50R

ヤマハTZM50R：12インチホイールが生み出す、レーシーな走りとスタイリング

ヤマハTZM50Rは、1993年2月にヤマハ発動機から発売された、12インチホイールを装備した原動機付自転車です。同社のレーサーレプリカシリーズとして、高い人気を誇るTZRシリーズの流れを汲むモデルであり、そのスポーティなデザインと走りの性能から、多くのライダーを魅了しました。

YZR250とYSR50/80からの系譜

TZM50Rの開発は、それまでのYSR50/80の後継車種として行われました。しかし、車名に冠された「TZM」には、単なる後継モデル以上の意味が込められています。その由来は、市販車ベースでロードレース世界選手権250ccクラスを制覇した原田哲也選手のTZ250M。TZM50Rは、その伝説的なマシンを彷彿とさせる、レーシーな血統を受け継いでいます。一方、TZR50Rをベースとしたエンジンは、大径キャブレターや拡大された掃気ポートの採用により、出力の向上を実現しました。シリンダーはTZM50R専用部品でありながら、後にTZR50Rにも採用されるなど、その高い性能は高く評価されています。

走りを支える、高性能パーツとシャシー

TZM50Rでは、ホイールに鋳造アルミの中空スポークホイールが採用され、軽量化と剛性の向上に貢献。前後ディスクブレーキも装備し、制動性能も大幅に向上しています。さらに、フロントサスペンションは片側オイルダンパーだったYSR50/80から、左右両方にオイルダンパーが採用されるなど、足回りも強化されました。リヤサスペンションには、モノクロス式を採用することで、路面からの入力への追従性も高められています。

フレームはYSRに比べてねじれ剛性が50%向上し、よりスポーティな走行を実現。一方、燃料タンクや一部のボディカウルは、コスト削減のためYSR50/80と共通部品が使用されました。このコスト意識とレーシングテクノロジーの融合が、TZM50Rの大きな特徴と言えるでしょう。

レースシーンでも高い評価を獲得

TZM50Rは、レースシーンにおいても高い人気を博しました。特に、YEC（ヤマハエンジンカスタマイズ）から提供された数々のレース用パーツは、高い信頼性と性能で多くのライダーから支持されました。中でも、YEC製CDIは定番パーツとして広く普及し、その信頼性は折り紙つきです。

エンジンとトランスミッション

TZM50Rに搭載されたエンジンは、水冷2ストローク単気筒49cc。最高出力は7.2psを誇り、軽快な走りを実現しました。トランスミッションは6速で、1速3.250から6速0.923とクロスレシオ化されており、様々な走行状況に対応できるよう設計されています。エンジンの基本設計はTZR50R(4EU)と共通ですが、細部においてはTZM50R独自のチューニングが施されています。

主要諸元と特徴

エンジン：水冷2ストローク単気筒49cc
最高出力：7.2ps
サスペンション：フロント/テレスコピック、リヤ/モノクロス式
ブレーキ：フロント/ディスク（片押し2ポット）、リヤ/ディスク（片押し1ポット）
トランスミッション：6速
車体重量：乾燥重量不明

TZM50Rは、徹底的な軽量化と高性能パーツの採用により、高い運動性能を実現しました。しかし、その一方で、シートカウル内への収納スペースは省かれており、実用性よりもスポーティな走りを優先した設計となっています。

モデルバリエーションと生産終了

TZM50Rは、1994年から1997年にかけて、いくつかのカラーバリエーションが発売されました。1994年には、白/赤と白/青の2色のモデルが、1997年には白/赤のモデルが発売されました。さらに、原田哲也選手の年間王者獲得を記念した限定車も発売されました。しかし、1999年12月には生産が終了。現在では、中古車市場で人気が高く、コレクターズアイテムとしての価値も高まっています。

TZM50Rは、そのレーシーなデザインと走りの性能、そしてヤマハの技術の粋を集めた、名車と言えるでしょう。

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