ヤマハ・WR250R/X

ヤマハWR250R/X：革新的トレールバイクの系譜

2007年、ヤマハ発動機から発売されたWR250R/Xは、日本の公道用トレールバイク市場に革命を起こしたモデルと言えるでしょう。オフロード競技車両WR250Fの市販車版という壮大な目標を掲げ、開発陣は数々の困難を乗り越えてこのマシンを生み出しました。

開発コンセプトと背景

WR250R/Xの開発は、「WR250Fの市販車を作る」という、非常に挑戦的なコンセプトから始まりました。しかし、レーサーであるWR250Fと市販車モデルでは、耐久性、燃費、騒音規制、出力特性など、多くの違いが存在します。当初はWR250Fのエンジンを流用する案も検討されましたが、規制をクリアするためには多くの困難が予想され、コスト面でも大きな課題がありました。

そこで開発陣は、エンジンを完全新設計することに決定。レーサー並みの高出力と、市販車としての扱いやすさ、耐久性の両立という、相反する要素を高いレベルで実現することに挑みます。単に高出力だけを追求するのではなく、誰でも安全に、そして楽しく乗れるバイクを目指したのです。

デザインと走りの性能

WR250R/Xのデザインは、ヤマハの初期モデルやオフロードバイクのデザインを手掛けたGKダイナミックスが担当。「エルゴノミクス」「センターマス」「ミニマム」「ニュームーブメント」という4つのコンセプトを基に、ライダーの操作性を重視した革新的なデザインが採用されました。

WR250Rはオフロード走行に適したブロックパターンのタイヤを、WR250Xはモタードスタイルに合わせたオンロードタイヤと17インチホイールを装着するなど、それぞれのモデルに合わせた仕様となっています。両モデルとも、アルミフレームを採用したことで軽量化と高い剛性を両立。国内の250ccトレールモデルにおいて、トップクラスのスペックを誇りました。

パワープラントには、77×53.6mmというビッグボア・ショートストロークの完全新設計エンジンを搭載。国産トレールモデル最高水準となる31ps/10000rpmの高出力を実現しながら、トレールモデルとして求められる高い耐久性も確保しています。高圧縮比（11.8:1）に対応するため、無鉛プレミアムガソリンの使用が指定されています。

シャシーは、YZ-Fシリーズの技術を応用。メインフレームに鍛造アルミ、その他にアルミ鋳造を採用するなど、徹底的な軽量化と高剛性化を追求しています。倒立式フロントフォークは46mmの大径インナーチューブと270mmのストロークを備え、フルアジャスタブル機構により、あらゆる路面状況に対応する高いサスペンション性能を提供します。

吸気系にはダウンドラフト・ストレート吸気を採用。大径吸気バルブにはチタンを採用することで、軽量化と高い吸入効率を実現しています。

モデルバリエーションと生産終了

WR250Rはオフロード走行に適した仕様、WR250Xはモタードスタイルに適した仕様という2つのバリエーションが用意されました。発売後はカラーリング変更のみで、大きなモデルチェンジが行われることはありませんでした。2017年には、両モデルとも生産終了が発表されましたが、その高い走行性能と洗練されたデザインは、多くのライダーに長く愛され続けています。

まとめ

WR250R/Xは、レーサー譲りの高性能と、市販車としての扱いやすさを両立させた、画期的なトレールバイクでした。その革新的なデザインと高い走行性能は、後のトレールバイク設計にも大きな影響を与えたと言えるでしょう。生産終了から数年が経過してもなお、中古市場でも高い人気を誇る名車です。

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