ヤング・アメリカンズ (曲)

「ヤング・アメリカンズ」（Young Americans）は、多才なアーティスト、デヴィッド・ボウイによって1975年に世に送り出された楽曲です。この作品は、彼がそれまで展開してきたスタイルから、フィラデルフィア・ソウルの影響を受けた新たな音楽性へと移行する過渡期を捉えており、「プラスティック・ソウル」とボウイ自身が称したサウンドを体現しています。

楽曲制作の契機となったのは、1974年に行われた北米ツアー「ダイアモンド・ドッグ・ツアー」の最中でした。特にツアー後半が「ザ・ソウル・ツアー」と改称されるほど、彼の音楽的方向性が変化を見せる中、同年8月11日、ボウイはフィラデルフィアに位置する名門シグマ・サウンド・スタジオに入り、次なるアルバムのレコーディングを開始します。しかし、彼は地元の著名なスタジオミュージシャン集団MFSBを中心としたセッションプレイヤーに頼るのではなく、自身のビジョンに基づき選定したメンバーやコーラス隊と共に制作を進めました。録音作業はスピーディーに行われ、多くのパートがテイクを重ねずに、ほぼ一発録りで収録されたと伝えられています。

完成した本作は、1975年2月21日にシングル盤としてリリースされました。イギリス盤ではB面に「サフラジェット・シティ」のライブバージョンが収められましたが、アメリカ盤ではエディ・フロイドのヒット曲「ノック・オン・ウッド」のライブカバーが採用されました。これらいずれのB面曲も、前年の1974年10月に発表されたライブアルバム『デヴィッド・ライヴ』に既に収録されていた音源です。そして、この「ヤング・アメリカンズ」は、シングル発売から間もない同年3月7日にリリースされた同名のスタジオアルバム『ヤング・アメリカンズ』において、堂々たるオープニングトラックとしてA面の一曲目に配置されました。

商業的な面でも一定の成功を収めており、アメリカのビルボード・Hot 100チャートでは、1975年5月10日付で最高28位を記録しました。イギリスでは18位、アイルランドでは13位、そしてニュージーランドでは7位にランクインするなど、各国でチャート入りを果たしています。

歌詞の内容も本作の特徴の一つです。レコーディングが始まったわずか2日前にアメリカ大統領職を辞任したリチャード・ニクソンの名前が具体的に登場するほか、公民権運動における象徴的な出来事の一つであるローザ・パークスによるバス・ボイコットを想起させるような箇所も見受けられます。また、コーラスパートでは一度だけ「I heard the news today, oh boy!」というフレーズが歌われますが、これはザ・ビートルズの楽曲「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の一節を引用した、彼らへのオマージュです。その「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の作者の一人であるジョン・レノンは、このアルバム制作に深く関わっており、ボウイとの共作「フェイム」や、自身の楽曲をカバーした「アクロス・ザ・ユニヴァース」で、バッキングボーカルやギター演奏を担当しています。

この楽曲のライブパフォーマンス映像としては、1974年11月2日に収録された『デヴィッド・キャヴェット・ショー』出演時のものが知られており、後にアルバムのコレクターズ・エディション盤や、ベスト盤『ベスト・オブ・ボウイ』などのコンピレーション作品に付属するDVDに収録され、広く視聴することが可能となっています。

レコーディングに参加した主なミュージシャンは以下の通りです。

デヴィッド・ボウイ - ボーカル、ギター
カルロス・アロマー - ギター
ウィリー・ウィークス - ベース
マイク・ガーソン - ピアノ
アンディ・ニューマーク - ドラムズ
デヴィッド・サンボーン - サックス
ラリー・ワシントン - コンガ
アヴァ・チェリー - バッキング・ボーカル
ロビン・クラーク - バッキング・ボーカル
ルーサー・ヴァンドロス - バッキング・ボーカル

「ヤング・アメリカンズ」は、デヴィッド・ボウイが自身の音楽性を進化させ、アメリカのソウルサウンドを取り入れた重要な転換点を示す楽曲として、今なお多くのリスナーに愛され続けています。権威ある音楽誌『ローリング・ストーン』が選定した「オールタイム・グレイテスト・ソング500」（2021年版）において、204位に位置づけられる評価を得ています。

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