ヤンチョー・ミクローシュ

ミクロシュ・ヤンチョー：ハンガリー映画界の巨匠

1921年、ハンガリーのペシュト県ヴァーツ市に生まれたミクロシュ・ヤンチョーは、20世紀を代表する映画監督の一人です。法学のバックグラウンドを持ちながら、映画製作の世界に足を踏み入れ、独自のスタイルを確立しました。彼の作品は、国際的に高い評価を受け、カンヌ国際映画祭を始めとする数々の映画祭で受賞を果たしています。しかしながら、日本ではあまり知られていない、隠れた巨匠と言えるでしょう。

法学から映画監督へ

ヤンチョーは高校卒業後、ハンガリー最古の大学であるペーチのエルジェーベト大学法学部に入学。その後、コロジュヴァールのフェレンツ・ヨージェフ大学を卒業し、弁護士資格を取得しました。しかし、彼は弁護士として働くことを選びませんでした。映画への情熱を胸に、ブダペストの国立映画芸術大学で映画製作を学び、本格的に映画監督としてのキャリアをスタートさせました。

ヘルナーディ・ジュラとの黄金時代

ヤンチョーのキャリアにおいて重要な人物として挙げられるのが、作家のヘルナーディ・ジュラです。1959年の出会い以来、2005年にヘルナーディが亡くなるまで、二人は数多くの作品を共同で制作しました。ヤンチョーが監督、ヘルナーディが脚本を担当するこの強力なタッグは、1960年代に世界的な評価を獲得する作品群を生み出し、ヤンチョーの映画的表現を決定づけることになります。

国際的な評価と独特なスタイル

1960年代後半からはイタリアへ拠点を移し、約10年間映画制作を続けました。その間に制作された作品は、ヤンチョーの独特なスタイルをさらに確立させることに繋がりました。彼の作品は、社会政治的なテーマを扱うことが多い一方、独特の映像表現と物語構成によって観る者を魅了します。1972年の作品『Még kér a nép (Red Psalm)』ではカンヌ国際映画祭監督賞を受賞するなど、高い評価を受けています。

主要作品

ヤンチョー監督は、50年代からコンスタントに作品を発表し続けました。その中には、

『密告の砦 (Szegénylegények)』(1965)
『Még kér a nép (Red Psalm)』(1972)
『Szerelmem, Elektra (Beloved Electra)』(1974)
『Vizi privati, pubbliche virtù (Private Vices and Public Virtues)』(1976)
『ハンガリアン狂詩曲 (Magyar rapszódia)』(1979)
『L'aube (Dawn)』(1985)
『Szörnyek évadja (Season of Monsters)』(1987)
『Jézus Krisztus horoszkópja (Jesus Christ's Horoscope)』(1989)
『Kék Duna keringö (Blue Danube Waltz)』(1992)
『Nekem lámpást adott kezembe az Úr, Pesten (Lord's Lantern in Budapest)』(1999)
* 『Anyád! A szúnyogok』(2000)

など、多岐にわたる作品があります。これらの作品は、彼の豊かな才能と独自の視点、そして時代背景を反映した内容となっています。

結論

ミクロシュ・ヤンチョーは、ハンガリー映画界のみならず、世界映画史において重要な役割を果たした監督です。彼の作品は、その独特のスタイルと社会への鋭い視点から、現在でも高い評価を受けています。日本ではあまり知られていないものの、彼の映画は、観る者に忘れがたい感動を与えることでしょう。彼の作品を通じて、ハンガリーの歴史と文化、そして人間の深層に迫る、貴重な体験をすることができるはずです。

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