ヤン・リーフェンス

ヤン・リーフェンス：レンブラントと競演したオランダの巨匠

ヤン・リーフェンス (1607年10月24日 - 1674年6月4日) は、17世紀オランダ黄金時代を代表する画家の一人です。故郷ライデンでタペストリー職人の父のもとに生まれた彼は、10歳の頃よりピーテル・ラストマンに師事し、類まれな才能を開花させました。12歳という若さで画家としての活動を始めたリーフェンスは、その卓越した技巧で神童と称賛され、早くから高い評価を得ていました。

特に、コルネリス・ファン・ハールレムの作品を模写した『デモクリトスとヘラクレイトス』や、自身の母を描いた肖像画は傑作として知られています。若き日の才能はオラニエ公マウリッツにも認められ、等身大の肖像画を購入された記録も残っています。さらに、リーフェンスは自身の作品を英国大使を通じてイングランド王ジェームズ1世に献上するなど、国際的な評価も確立していました。

31歳の時、リーフェンスはイングランド宮廷に招かれ、宮廷画家としての活動を開始しました。帰国後はアントワープに拠点を移し、貴族や市長からの依頼を数多く受注するなど、成功を収めました。ライデンの市庁舎のために制作された『スキピオの自制』や、アムステルダムの市長の部屋に飾られた作品など、彼の作品は社会的に重要な役割も担っていました。詩人ヨースト・ファン・デン・フォンデルの作品にも、リーフェンスの作品が言及されているほどです。

リーフェンスは、1626年から1631年にかけて、レンブラントと共同で工房を運営していました。二人の競作とされる絵画、素描、エッチングは24点にも及び、互いに切磋琢磨した関係がうかがえます。リーフェンスは特に等身大の肖像画に秀でており、その劇的な構図はカラヴァッジョの影響を示唆しています。

1631年、リーフェンスとレンブラントは袂を分かち、レンブラントはアムステルダムへ、リーフェンスはイングランドへと移りました。イングランド時代には、第21代アランデル伯トマス・ハワードの肖像画を描くなど、活躍を続けました。また、アンソニー・ヴァン・ダイクの影響も垣間見ることができます。アントワープ時代にはアドリアーン・ブラウエルとの共同制作も行い、多様な表現に挑戦しました。

デン・ハーグとベルリンでは宮廷画家として活躍した後、1655年にアムステルダムに戻りました。最初の妻の死後、1648年にはヤン・デ・ブライの姉妹と再婚しています。晩年は経済的な困難に直面し、死後には借金が残されたと言われています。

ヤン・リーフェンスは、レンブラントという偉大な画家との競争関係、そしてイングランドやオランダの宮廷を舞台とした華麗なキャリアを通じて、17世紀オランダ絵画史に燦然と輝く足跡を残しました。彼の作品は、ドラマチックな構成と繊細な描写が見事に融合した、独特の表現様式を特徴としています。現在も世界各地の美術館に所蔵され、多くの人々を魅了し続けています。

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