ヤン・ヴィレム・デ・フリーント

ヤン・ヴィレム・デ・フリーント（Jan Willem de Vriend, 1962年7月31日 - ）は、オランダ出身の指揮者、そしてヴァイオリニストとして知られる人物です。

1962年、オランダのライデン市に生を受けたデ・フリーント氏は、その音楽キャリアをヴァイオリン奏者としてスタートさせました。彼の音楽家としての歩みにおいて特に重要なのは、1982年に自らの手で設立したコンバッティメント・コンソート・アムステルダムです。このアンサンブルは、特にバロックや古典派を中心とする古楽レパートリーの演奏を専門としていました。デ・フリーント氏は設立当初から、アンサンブル全体の音楽監督、演奏の中心的役割を担うコンサートマスター、そして指揮者という三つの役割を兼任し、そのリーダーシップのもと、コンバッティメント・コンソートを2015年まで牽引しました。この期間中、アンサンブルは国内外で精力的に演奏活動を展開し、数多くの演奏会を成功させるとともに、多数のレコーディングを行い、多くのCDを世に送り出しました。コンバッティメント・コンソートでの活動は、彼が古楽演奏分野において確固たる地位を築く上で極めて重要な基盤となりました。

コンバッティメント・コンソートでの活動に一区切りをつけた後、デ・フリーント氏は指揮者としての活動にその軸足を完全に移すことを決意します。2013年以降、彼のキャリアの中心はオーケストラ指揮へと完全にシフトしました。指揮者としての活動を本格化させてからは、オランダ国内はもちろん、海外の様々な主要オーケストラから客演指揮者として頻繁に招かれるようになります。客演したオーケストラには、オランダが世界に誇るロイヤル・コンセルトヘンボウ管弦楽団やオランダ放送室内フィルといった国内の主要団体に加え、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団などの海外の著名なオーケストラも含まれています。

さらに、デ・フリーント氏は特定のオーケストラにおいて要職を歴任し、その楽団の芸術的な発展に貢献しました。2006年から2017年までの約11年間、エンスヘデを本拠とするオルケスト・ファン・ヘット・オーステン（後にオランダ交響楽団と改称）の音楽監督を務めました。この任期満了に際して、2017年5月に行われた退任記念コンサートでは、長年の功績が認められ、エンスヘデ市より名誉ある勲章が授与されています。また、オランダを代表するオーケストラの一つであるハーグ・レジデンティ管弦楽団は、2014年3月に、2015年8月から4年間の契約でデ・フリーント氏を常任指揮者に迎えることを発表しました。

ヤン・ヴィレム・デ・フリーント氏の氏名の日本語表記について、補足しておくべき点があります。日本では稀に「デ・フリエンド」と表記されるケースが見受けられますが、オランダ語の発音規則では、アルファベットの「IE」という綴りは、その上にトレマ（¨）が付かない限り二重母音にはならず、単母音に近い発音となります。このため、「デ・フリーント」あるいは「デ・フリント」という表記の方が、現地語の発音に忠実であると言えます。

ヴァイオリニスト、そして特に指揮者として、ヤン・ヴィレム・デ・フリーント氏はクラシック音楽界において多大な貢献を果たしてきました。自身の設立したアンサンブルでの古楽探求から始まり、現在は指揮者として幅広いオーケストラを率いる彼の音楽家としての軌跡は、多くの聴衆にとって魅力的なものです。

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