ヤーコフ・ゼルドビッチ

ヤーコフ・ボリソヴィチ・ゼルドヴィチ

ヤーコフ・ボリソヴィチ・ゼルドヴィチ（1914年3月8日 - 1987年12月2日）は、著名なソビエト連邦の物理学者であり、核物理学から天体物理学まで多岐にわたる分野で顕著な業績を残しました。彼は特に、ソビエトの核兵器開発において重要な役割を果たし、数々の理論を構築しました。

生涯の概略

ゼルドヴィチはミンスクに生まれ、その後家族と共にサンクトペテルブルクに移住しました。1931年には、ソビエト科学アカデミーの化学物理研究所でキャリアをスタートし、1941年のドイツの侵攻に伴いカザンに避難。1943年以降はモスクワに戻り、活動を続けました。

初期の研究は物理化学に焦点を当て、特に窒素の熱酸化についての研究が評価される中で、1930年代後半からは燃焼の分野でも重要な成果を上げました。彼は、ユーリ・ハリトンと共に核連鎖反応に関する理論の基礎を築き、1960年代にはイーゴリ・クルチャトフと共にソビエトの核兵器開発に取り組み、爆縮レンズの設計に関連する「ゼルドヴィッチ・フォン・ノイマン・デーリング理論（ZND理論）」を提案しました。

素粒子物理学の成果

1950年代には素粒子物理学に興味を持ち始め、特にパイ中間子のベータ崩壊を予測しました。この間には、S・S・ゲルトシュタインとの共同研究を通じて、弱い力と電磁力の関係についての見識を深めました。1960年には中間子触媒反応の予測を行い、1977年にはF・シャピロとの共同研究により冷中性子の特性を探ることで、クルチャートフ賞を受賞しました。1958年にソビエト科学アカデミーの会員に選出され、1965年から1983年まで応用数学研究所の部長を務めるなど、学術界での影響力を拡大しました。

天体物理学の業績

1965年には天体物理学の研究を開始し、モスクワ大学での教授職とシュテルンベルク天文研究所での部長職に就きました。彼は50歳を過ぎてからの研究活動にもかかわらず、多くの業績を残しました。特に、ラシード・スニャーエフとの共同研究により、銀河団内のガスが宇宙背景放射のエネルギーに影響を与えるスニャーエフ・ゼルドヴィッチ効果を予測しました。

主な業績

ゼルドヴィチは、多数の重要な理論を提案しました。具体的には、1967年には宇宙論における真空エネルギーが宇宙項と類似に振る舞うことを示し、1969年には中性子星付近の降着円盤からのX線放出に関する予測を立てました。また、1972年にはスニャーエフ・ゼルドヴィッチ効果を発表し、1974年には宇宙における位相欠陥に関する研究を行いました。

謝辞

彼の業績は高く評価され、1957年にはレーニン賞、1983年にはブルース・メダル、1984年には王立天文学会ゴールドメダル、1985年にはICTPのディラック・メダルを受賞しました。また、[小惑星] Zel'dovichにも名を残し、彼の名にちなんだゼルドビッチ賞も設けられました。

ゼルドヴィチは、物理学の多くの分野で画期的な業績を残し、後世の科学者に大きな影響を与えた偉大な存在として、今も記憶されています。

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