ヤーコプ3世 (バーデン＝ハッハベルク辺境伯)

ヤーコプ3世：波乱の生涯と宗教的転換

ヤーコプ3世（1562年 - 1590年）は、バーデン＝ハッハベルク辺境伯として知られています。彼の生涯は、宗教的対立と政治的駆け引きに翻弄された時代を反映しており、その短い治世は多くの謎と混乱に満ちています。

生涯

ヤーコプ3世は、バーデン＝ドゥルラハ辺境伯カール2世の息子として生まれました。幼少期から科学に強い関心を持ち、テュービンゲンやシュトラスブルクで学び、その後イタリアやフランスへ遊学しました。父の死後、ヤーコプは未成年であったため、母アンナや周辺諸侯による摂政政治が行われました。

領土分割と兄弟の対立

ヤーコプ3世は、兄エルンスト・フリードリヒと共に領地の統治を望んでいました。父の遺言で領土分割は禁じられていましたが、遺言の不備を突かれ、バーデン辺境伯領は分割されることになります。ヤーコプはハッハベルク領を獲得し、エメンディンゲンを拠点としました。兄エルンスト・フリードリヒは、ドゥルラハなどニーダー・バーデンを、弟ゲオルク・フリードリヒは、オーバー・バーデンをそれぞれ獲得しました。しかし、ヤーコプの息子エルンスト・ヤーコプの死後、ハッハベルクはエルンスト・フリードリヒの手に渡り、後にバーデン＝ドゥルラハとして再統一されることになります。

宗教的転換とその影響

ヤーコプ3世の生涯において最も重要な出来事の一つは、ルター派からカトリックへの改宗です。兄弟たちがそれぞれ異なる宗派を選択する中、ヤーコプは1590年にカトリックに改宗しました。これは、アウクスブルクの和議後、初めてのドイツのプロテスタント諸侯の改宗であり、国内に大きな波紋を呼びました。彼は領内の国教をカトリックに改めようとしましたが、領民の反発を招き、政治的な混乱を引き起こしました。

突然の死とその後

改宗からわずか1週間後、ヤーコプ3世は28歳という若さで突然亡くなります。死因はヒ素中毒であったとされ、暗殺の可能性も指摘されています。彼の死後、未亡人となったエリザベトはカトリックに改宗しましたが、後継者争いや宗教対立が激化し、領内はさらに混乱しました。

結婚と子供たち

ヤーコプ3世は、1584年にエリザベト・ファン・クレンボルフ＝パランツと結婚し、4人の子供をもうけました。

アンナ（1585年 - 1649年）
カール・エルンスト（1588年 - 1588年）
ヤコベア（1589年 - 1625年）
エルンスト・ヤーコプ（1590年 - 1591年）

ヤーコプ3世の死が示すもの

ヤーコプ3世の生涯は、16世紀のヨーロッパにおける宗教対立と権力闘争の激しさを物語っています。彼の突然の死は、宗教的な緊張と諸侯の権力欲が絡み合った結果であり、その後の三十年戦争へと繋がる時代の縮図と言えるでしょう。

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