ヤーノ・サーリネン

ヤーノ・サーリネン：才能と悲劇の物語

ヤーノ・サーリネン (Jarno Saarinen、1945年12月11日 - 1973年5月20日) は、フィンランド出身のオートバイレーサーとして知られています。その卓越したテクニックから「フライング・フィン」のニックネームで親しまれ、世界グランプリで輝かしい活躍を見せました。

アイスレースから世界チャンピオンへ

サーリネンは、アイスレースライダーとしてキャリアをスタートさせました。しかし、彼はすぐにロードレースへと転向し、その才能を開花させます。類まれな才能と努力で頭角を現し、1970年には世界GP250ccクラスでランキング4位、1971年には3位と着実に順位を上げていきます。そして、1972年、彼は念願の世界GP250ccクラスのチャンピオンに輝きました。ヤマハのマシンを駆り、圧倒的な速さでライバルたちを寄せ付けませんでした。

悲劇のイタリアGP

1973年、サーリネンはヤマハワークスライダーとして500ccクラスと250ccクラスに参戦します。500ccクラスでは初戦で優勝するなど、その勢いはとどまるところを知りませんでした。しかし、運命の歯車は回り始めます。イタリアGP（モンツァ・サーキット）250ccクラスのレース、スタート直後、悲劇は起こりました。

直前の350ccクラスのレースでコース上にオイルが漏洩。十分な処理が行われないまま、250ccクラスのレースがスタートしました。トップを走るレンツォ・パゾリーニ選手のマシンがオイルでスリップし、転倒。その後ろを走っていたサーリネン選手は、避けきれずにパゾリーニ選手のマシンに追突。多重クラッシュとなり、サーリネン選手は27歳の若さで命を落としました。パゾリーニ選手もこの事故で亡くなりました。この事故は、レース界に大きな衝撃を与え、サーリネンの死は多くの関係者を深い悲しみに陥れました。

ハングオフの先駆者

サーリネンは、現在のロードレースで主流となっているハングオフテクニックの先駆者であったとされています。膝を擦って走行するこのテクニックは、サーリネンが世界で初めて実践したとも言われています。そのライディングスタイルは、多くのライダーたちに影響を与え、後のロードレースの発展に貢献しました。また、彼はレーシングライダーに必要な体力について、独自の理論を持っていました。その言葉は、後世のライダーたちのトレーニング方法にも影響を与えています。

安全対策の転換点

サーリネンの事故は、レース界の安全対策を見直すきっかけとなりました。当時、決勝スタート前のサイティングラップは一般的ではありませんでしたが、この事故を機に、サイティングラップの実施などが進められ、安全対策は大きく改善されました。

永遠の記憶

F1ドライバーのヤルノ・トゥルーリは、サーリネンにちなんで名前が付けられました。サーリネンの才能と人柄は、多くの人の心に深く刻まれています。彼の功績は、現代のロードレースにも受け継がれ、彼の名前は永遠に語り継がれていくでしょう。

主な戦績

1965年：フィンランド・アイスレース・チャンピオン
1970年：世界GP250ccクラスランキング4位
1971年：世界GP250ccクラスランキング3位
1972年：世界GP250ccクラスチャンピオン
1973年：世界GP500ccクラス、250ccクラス参戦
1973年5月20日：イタリアGP 250ccクラスで事故死

参考文献

根本健『グランプリを走りたい - '60-'70を駆け抜けたバイク人生』（枻出版社）
片山敬済『片山敬済 俺だけの2輪テクニック』（三推社・講談社）

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